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535話 案外みんな信じている

 それはともかくとして。

 女だらけの部屋で美味しいお茶とお菓子が揃えば、女子会は盛り上がること間違いなしだ。

 このために台所のボルカに頼んで料理人を貸してもらい、都風の菓子を作ってもらいもした。

 雨妹ユイメイイチオシ菓子である麻花も、若干異国風に味が工夫されているのが面白い。


シェン殿下はあまり都風の菓子にこだわりませんので、実はこういうものを口にする機会はないのです。

 ですが、美味しいですね」


リフィは雨妹が大好きな麻花を気に入ってくれたようで、二つ目に手を伸ばしつつそう話す。

 やはり麻花のように作り方がそう凝っているわけではないものは、他国の人にも受け入れられやすいのだろう。

 こうして麻花を十分に味わったリフィが、ふいに表情を曇らせる。


「それにしても皆さま、恐ろしい思いをされましたね。

 友仁ユレン殿下は都で恐ろしい思いをして、その心を癒すためにこの幡の地まで足を運ばれたというのに。

 また恐ろしい思いをさせてしまったとあっては、なんと謝罪をすればいいものか」


言われた友仁はというと、ちょっと首を傾げている。


「うぅんと、ドキドキはしたけれど、怖ろしくはなかったよ。

 だって、皇帝陛下と太子殿下が精鋭を貸してくださったもの。

 特にミン殿は、父上のお気に入りだから!」


最後にニパッと笑う友仁だが、確かに戦乱期を生き抜いた明が側にいるのは、友仁には急襲の際に安心感があっただろう。

 この安心感は、立勇リーヨンにはまだ出せないものだ。

 雨妹からすると飲んだくれの酔っ払いからの生まれ変わったかのような変貌ぶりに若干ついて行けない気もするが、友仁はそもそも明の飲んだくれ時代を知らないので、存在がかなり美化されているのだろう。

 父や兄について自慢げに話す友仁に、リフィが微笑ましさと悲しさが混じり合うような顔になる。


「殿下は、父上様や兄上様と仲がよろしいのですね」


リフィのそんな言葉に、しかし友仁はふるふると首を横に振った。


「いいや、兄上と時々話すようになったのは、ここ一年くらいだよ?

 父上とも滅多に話さないし」

「「えっ?」」


友仁の言葉に、リフィだけでなく胡霜フー・シュアンも疑問の声を上げた。


 ――まあ、事情を知らないとそんな反応かもね。


 友仁は二人の反応を不思議そうに見るが、後宮では友仁の環境は周知の事実であったので、これまでこのようなことを言われたことがなかったのだろう。


「その前は私、父上も兄上も私の名前を忘れているんじゃないかな、くらいに思っていたのだし」

「そうなのですか!?」


あっさりと告げる友仁に、リフィが驚いているし、胡霜も目を丸くしていた。

 けれど事実、後宮は広く妃も多いので、太子とて生まれた全ての兄弟姉妹を認識しているかというのは、怪しいところだ。

 名前は知っているが顔を見たことがない、ということだってあるだろう。

 父も妃に求められ、気が向いたから子を為したものの、産まれた後は実家に引き取られては、生まれてから一度も会ったことがない子どもがいそうである。

 言葉選びを間違えたかと気遣いの表情を浮かべるリフィだったが、このようなことは別に後宮育ちとして可哀想なわけではなく、普通の環境である。

 妃が王妃と側妃しかいない丹国と、後宮を抱える崔国の妃事情はだいぶ違うようなので、リフィにはそのあたりが理解できなくとも不思議はない。

 友仁はリフィの気遣いを無用だというように、話を続ける。


「けどね、父上と兄上は、私がとても困っていた時に、助けに来てくれたんだ。

 あ、それよりも先に駆けつけてくれたのは、雨妹だったね。

 あと、立勇の兄弟殿!」

「ええ、それも太子殿下のご尽力のおかげでしたよ」


友仁の言葉に、雨妹がそう言い添えると。


「立勇は後宮の話にも通じていて、兄弟殿からたくさんお話を聞いているのだって」


楽しそうに言う友仁だが、立勇と立彬の双子説は案外疑われないものらしい。


 ――ひょっとして、初っ端から疑惑のなんちゃって双子になった私の方がおかしいの?


 確かに華流ドラマオタクとしての思い込みで、色眼鏡がかかっているとは思うけれども。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 まあ、皇帝陛下も太子殿下も、名前は知っていても一度も会った事がない皇子殿下や皇女殿下はいるかもしれませんねw 先の皇帝陛下程では無くても、妃の数はそれなりにいますからね…
[一言] 〉楽しそうに言う友仁だが、立勇と立彬の双子説は案外疑われないものらしい。  ――ひょっとして、初っ端に怪しんだ私の方がおかしいの? 雨妹は怪しんでいなくて普通に「立勇さんは、双子の兄弟でも…
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