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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十二章 国主の一族たち

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526話 往生際が悪い人々

だが抵抗しているのはチー家の娘ばかりではない。


『返せ、王太子殿下を返せ!』


侵入者たちも、まだ元気がある者がわめいている。

 それを聞いて、リュが渋い顔になった。


「やはり連中、目当てはあの王子様のようで。

 『返せ』って言っているが、まるでウチが誘拐したみたいな言い草だぁ」

「だいたい、宜ではどういう説明がされているんだか」


呂のぼやきに雨妹ユイメイも渋い顔になるが、気になることもある。


「あの人たちは、宜国内ではどちらの勢力なのでしょうか?」


そう、彼らを送り込んだのは商人連合と王家のどちらなのか、それで話は違ってくるだろう。


「さてねぇ、あるいはとりあえず王子の身柄を確保して、より高く買ってくれそうな相手に売るっていう手もあるしなぁ」


すると呂からさらなる最悪な想定を聞かされた。

 ジャヤンタは自分たちで捨てた王子だろうに、いざ状況が変われば「王子はあいつらに攫われたのだ」と言い張り、助けた第三者である沈を悪者にしているというのが、今起きていることだ。

 なんとも最悪な手のひら返しだが、そういう話は前世のニュースでもたまにあったことだ。


 ――国際問題って、ご都合主義みたいなところあるもんね。


 というかこういう状況が嫌だから、シェンも早くジャヤンタをどこかに追い出したかったのだろう。

 けれど宜は今のように邸にこっそり侵入させるのが関の山で、国として正式に抗議をしてきたわけではないところを考えるに、やはり国内の意見をまとめられていないのかもしれない。


「お前たちのような盗人の言うことをまともに聞くわけがなかろう、連れて行け」


沈は侵入者たちをまともに見ることもせず、兵士に移動させた。

 彼らと一緒に、斉家の娘も連れていかれるところであるのだが。


「なによ、わたくしがなにをしたというの!?

 ただ親しくなった方に招かれて、この場にいるだけよ!」


彼女はまだ抵抗するらしく、連れて行かれまいと踏ん張っている。

 またもや気になることをポロリしてくれたが、それは後で考えることにして。

 沈の連れてきた兵士たちは斉家の娘という相手に強く出られておらず、形勢が彼女有利に傾き出しているではないか。


「ふふ、そうよ、わたくしは斉家の媛よ!」


彼女も自身を無下に扱えない兵士たちを見て、再び得意な気分になってきていると見える。

 あのままでは、兵士が彼女の縄を解いてしまいそうだ。


 ――揚州の出身者は、あてにできないみたいっぽいな。


 兵士を動かすとこうなるから、林が単独行動をしていたのかと、雨妹は推測する。

 それなのに沈がはっきり言ってお邪魔虫でしかない兵士をあえて連れてきた理由はなんだろうか?


「わざわざ観客を用意するとは、念が入っているのか、趣味が悪いのか」


明が苦い声で漏らすのが聞こえ、雨妹は「そういうことか」と納得する。

 沈は兵士を通じて揚州の者たちに斉家のやり口を伝え、未だに斉家に味方している人々を引きはがそうというのだ。

 腐っても大公としてこの揚州の地を長く治めてきた一族であるため、大公の権力移行はそうそう上手くはいかないようだ。


 ――けど斉家って、しぶとさを発揮する方向性が違うんだよなぁ。


 そのしぶとさを、もっと民のためになることにつぎ込むのであれば、父や宮城も斉家に味方したであろうに。

 同じ異国に接する地であるが、徐州のホァン家とは大違いだと、雨妹はため息を吐きたくなる。

 黄家の方には、異国に開かれた海を制する者としての矜持があった。

 海の安全に気を配り、海賊が出れば黄家自らが戦いに赴き、身体を張って航路を守っていた。

 黄家にも黄県主のような権力欲旺盛で我儘な人がいたが、結果彼女たちは黄大公によって黄家の系譜から消されたという。

 危うく佳の街を危ない目に遭わせるところであった黄県主だが、利民リミンによって阻止されたし、最後には老いて衰えても黄大公がちゃんと締めてみせた。

 一方で斉家は、大公家としての力のほとんどを宜に依存していたようだ。

 斉大公に必要なのは宜へ媚びる力であったのだろう。

 だからまだ若い娘とはいえ、斉家の媛がこのような体たらくなのだ。

 しかも他の斉家の者が現れて、彼女を戒める様子は全く見られない。

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