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502話 おでかけ雨妹

雨妹ユイメイの意見を受けて、立勇リーヨンが告げる。


「今お前が語ったように、他国でいつの間にやら国主の血統交代となったということは、ある意味落ち目の国ではたまに耳にすることではある」

「やはり、本当にそういうことがあるんですね」


立勇から世知辛い「偉い人あるある」を聞いてしまった雨妹は、自分で言っておきながら感心してしまう。

 ちなみに崔は古来下剋上が頻繁に起きているお国柄なので、血統交代など珍しいことでもなかった。

 ある意味、国の自浄作用がちゃんと働いているということかもしれない。

 それはともかくとして。

 つまり、リフィは宜でそんな商人たちと王家の思惑に挟まれてしまったわけだ。


 ――さぞかし居心地の悪い思いをしていただろうに。


 そしてその宜の思惑に乗ってリフィを差し出したのが、リフィの母である丹の妾妃である。

 彼女は国の未来を考えなかったのか?

 それより、目先の金に目がくらんだのだろうか?

 政治のことなど考えず、ただ愛を乞う女として生きるように育てられた人だったのか?

 妾妃について、色々な疑問が浮かんでしまう。

 そして、そんな妾妃の望みをホイホイ聞いてしまった国王もどうなのか?

 それに後にリフィの救出に来たという兄王子は、本当にリフィの境遇を知らなかったのだろうか?

 自身が幼少の頃から弟王子との跡目争いに夢中になっていれば、妹のことなど気にかけていられなかったのかもしれないけれども。


「私たちって、大きく見れば宜の問題に振り回されていますね」


沈の言動に振り回されていると思いきや、その沈の裏に宜のお国事情があったのだから、お騒がせな隣国があると迷惑この上ない。


「我が国が巻き込まれるのは、遅かれ早かれという気もするがな」

「ですよねぇ」


立勇はいっそ悟りを開いたかのように告げるが、隣国を選べないことが本当に辛い。


 ――それにしてもシェン殿下、肝心なことを言っていなかったんだからぁ!


 もしくは、雨妹たちがあちらの意見を丸のみするのかを試された可能性もある。

 ただ、今雨妹に言えるのは、王族やら皇族やらに生まれるのはまっぴらごめんだということであろう。

 自身が崔の公主として名前が載っていなくて本当によかったと、改めて安堵する雨妹である。

 立勇とそんな話をして、とにかく雨妹は意見を吐き出して若干すっきりしたところで、立ち寄った部屋を出て、友仁の離宮へ戻るために再び足を進めるのだった。



それから数日後のこと。


「賑やかですねぇ!」

「ふふ、涼しい時間の市場は一番混むのですよ」


はしゃぐ雨妹に、微笑ましそうに説明してくれるのはリフィである。


「あ、美味しそうな匂い!」


そして鼻に飛び込んできた香りに反射して駆けだそうとした雨妹は、しかし襟の後ろを掴まれて阻止された。


「雨妹、くれぐれも走るな」


背後から釘を刺すのは立勇で、「ぐえっ」となった雨妹は恨めしい顔で振り返る。


「もう一度言うが、くれぐれも走るな」

「はぁい」


二度まで言う立勇からじろりと睨まれ、雨妹は大人しく返事をする。

 しかし立勇は「信用ならない」という表情をしており、非常に心外である。

 雨妹だって、いつだって大人しくしようとは心掛けているのだ。

 ただ、たまに好奇心に負けてしまうだけで。


「まあ!」


そんな雨妹と立勇のやり取りを見ていて、リフィがコロコロと笑う。



ところで、今雨妹たちがいるのは幡の街中である。

 何故このような場所に三人でいるのかというと、友仁ユレンが雨妹へ休暇を命じたためだ。


「雨妹は、働き過ぎだと思う!」


友仁が真面目な顔で言ったのは、胡霜を見ていて気付いたからだそうだ。

 人員補充要員の胡霜フー・シュアンは、胡安フー・アンの休息の際に代わりを務めるという役目もある。

 互いのことを良く知っている兄妹であるため、胡安も頼める事と頼めない事の見分けがつきやすいようだ。

 友仁はそうやって交代で休んでいる胡兄妹を見ていて、ふと「そういえば、雨妹は毎日近くにいるな?」と思い至ったらしい。

 正確には雨妹だって休んでいるが、それを半休や時間休などに留めていたのだ。

 しかし配下の休暇を気にする友仁の宣言で、丸一日休日を貰えることになったのだ。

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