表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十二章 国主の一族たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

504/681

500話 宜という国の、本当のところ

ボルカがさらに述べる。


「今回の宜もどうせ、丹の利権をめぐっての商人と王家の争いだろうさ。

 それに姫様を巻き込むなんて、酷ぇ話よ。

 だいたい、丹がなくなることを前提に話をするのも気分が悪い!

 そんな男とずっと顔を突き合わせていたんだ。

 そりゃあ姫様だって主殿のことを、今まで会ったどの男よりもいい男だと思うだろう?」

「思うでしょうね!」


ボルカに熱弁され、雨妹ユイメイは思わずコクコクと頷く。

 雨妹としては、沈だってアレな性格をしていると思うが、比較対象が酷いと不思議とマシな男に見えるという現象である。

 それにしてもここへ来て、リフィの恋する乙女路線が復活してきたことで、状況がまたややこしくなった。


 ――これは、持ち帰って相談だな。


 リュあたりが、このボルカの意見を補ってくれるかもしれない。

 それにボルカの話を聞いていると、宜という国についての印象がだいぶ変わってきた。

 宜とはひょっとして「豊かな大国」ではないのかもしれない。

 だがなにはともあれ、今はリフィを心配するボルカを安心させてやりたいと、雨妹は思う。


「ボルカさん、こちらがそんなまどろっこしいことを考えずとも、リフィさんにその気があれば、きっと立ち直れますよ」

「そうだといいなぁ」

雨妹がニコリと笑って告げると、ボルカはそう弱々しく零すのだった。



ボルカとそんなやり取りをした後、雨妹は台所の外で待っていた立勇リーヨンと合流した。


「もしかして、宜とは元は貧しい国なのですか?」


顔を見るなり言う雨妹に、立勇が眉を上げてみせる。


「唐突な質問だな」


確かに、立勇としては前置きもなく言われても、意味不明であろう。


「実はですね……」


雨妹は友仁ユレンの離宮へ戻る途中で物置らしい部屋へ立ち寄り、ボルカとの会話を小声で報告する。


「というわけで、リフィさんに協力していたのはボルカさんでした」


雨妹の話した内容に、立勇が「ふむ」と考える仕草をする。


「その者は、元々がこの邸付きの料理人であったか。

 邸の造りに詳しいのも道理だな。

 それになるほど、貴重な地元の意見だ」


立勇にとっても重要な話であったようだ。

 インターネットでなんでも検索して知れた前世と違い、ここでは他国の情報は人の口伝いに聞き知るしかない。

 手持ちの情報を補完するためのそうした口伝情報は、いくらあってもいいだろう。


 ――情報を集めるお仕事の人って、大変だよね。


 今こうして他国と接する土地を訪れて、雨妹は余計にそう感じる。

 どれだけ確実な情報を得るかは、どれだけ多くの人から話を聞いたかにかかっているのだ。

 そしてこうした確実な情報を得るために、呂のような職業が必要なのだろう。

 まあそのことは、今はおいておくとして。


「それで、宜は自国の売り物がないから、金を得るために『兵士』なんていう人身売買まがいのことを始めたのかな、と思いまして」


雨妹の持論に、立勇が「鋭いな」と返してきた。


「宜は昔から鉱山からとれる鉄で作る武器が売りであったが、鉱山とはいつか掘り尽くされてしまうのは、自然の成り行きだ」


宜の鉱山からの産出量などは極秘事項だとして表に出ないが、規模や過去の事例から推定して、そろそろ掘り尽くしてもおかしくはない、という話は言われているのだという。

 しかし鉱山がなくなれば、宜は金を稼ぐ手段がない。

 だからといって、宜の国土のほとんどが農業には向かない土地なので、農業への転換は容易にはできないらしいのだ。


「ならばと、自らが生きるために非道な商売に踏み切ったのだと、想像はできる」

「ふぅむ」


立勇の意見に、雨妹は考え込む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ