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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十二章 国主の一族たち

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469話 先に顔合わせ

 そしてここでふと、胡安フー・アン胡霜フー・シュアンについて「子を育てる母親」だと言っていたことを思い出した。


「胡霜さんはご家族がいるのですよね?」


尋ねる雨妹ユイメイに、胡霜が頷く。


「ああ、夫も息子も傭兵団にいるよ。

 私がこの仕事を受けている間、二人は別の仕事をしている」


なんと、一家そろって傭兵団で働いているのだという。


「息子さんは、おいくつなので?」

「そうだね、お前さんよりちょいと年上くらいか」


なるほど、では胡霜の息子は年齢的にも傭兵団の新人というわけか。

 傭兵一家の暮らしとは、一体どのようなものだろうか? などと想像してみる雨妹であった。



そんなこんなで雨妹と胡霜の会話が弾んでいる間に、離宮の友仁ユレンの部屋に到着した。

 本来ならば、胡霜の身なりを整えてから目通りとするべきだろうが、まずは先に顔だけ見せておくことにした。

 なにかの行き違いで、友仁が他の人物を新しいお付きだと誤解するのを避けるためだ。

 友仁の部屋の扉の外を守っていた兵士と立勇が交代してから、胡安が扉を叩く。


「戻りました」


返事を待って胡安が部屋の扉を開けると、中では友仁がミンから話を聞いているところであった。

 しかもえらくニコニコ笑顔なので、よほど明の話が楽しかったらしい。


「明から、陛下の山賊退治の話を聞いていたんだ」

「それは、貴重な話を伺えましたね」


待っている間のことを教えてくれた友仁に、胡安が微笑ましそうにしている。

 どうやら明は待っている時間を潰すのに、皆が大好きな英雄皇帝の昔話をしていたらしい。

 しかもあまりドロドロとせず、子ども受けしそうな話題を選んだようだ。


 ――明様って、子どもに対してそういう気遣いができる人だったのか。


 赤ん坊時代の雨妹をスポンと忘れていた男なので、てっきり明はそもそもが子ども嫌いなのかと思っていたのだが、どうやらそういうわけではないらしい。

 赤ん坊の頃など記憶にないとはいえ、いつまでも根に持つ雨妹なのである。


「なにか言いたいことがあるなら、言え」


雨妹が心の中で若干貶していることをなんとなく察したのか、明が渋い顔で視線を向けてきた。


「いいえ、なにもございませんとも」


雨妹はすまし顔で受け流すものの、自然とジト目になってしまうのは仕方ないことなのだ。

 そんな雨妹と明の攻防はおいておくとして。


「殿下、こちらは我が妹の胡霜でございます」


胡安が紹介すると、胡霜はさっと進み出て、流れるような動きで跪いて礼をとってみせた。


「胡霜と申します、どうぞよろしく」


胡霜は短い髪と頭巾とが無頼の雰囲気を醸し出すものの、こうした仕草に慣れているようで、近衛にも見劣りしない。


「こちらこそ、よろしく頼む」


そんな胡霜に応える友仁が緊張した様子でいるのは、相手がこれまで出会ったことがない人間だからかもしれない。

 それにしても、胡安は礼儀がどうのと不安を口にしていたが、今の所十分に礼儀ができているではないか。


 ――胡霜さんが都に来たのは、そもそも皇族の護衛としてだったっけ。


 花の宴に参加する皇族の護衛に無礼者を共に加えていたとなると、その皇族の品位が貶められるのだから、胡霜がいる傭兵団は依頼者の皇族から、それだけ信頼があったというのに他ならない。

 なるほど、傭兵とは大きな仕事を請けたいと思えば、ある意味そこいらの兵士よりも、礼儀作法を学ばなければならないのかもしれない。


 ――なんだ、胡安さんってば心配のし過ぎだよ。


 雨妹がそう考えていると。


「この場限りの側仕えとなりますが、心を込めてお仕えしたく思います。

 ところで短い間ですが我が主となるお方。花はお好きでございますかな?」


側仕えとしての心づもりを語っていた胡霜が、急に話を変えてきた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 根に持って当然だと思うよ、恋にかまけて見殺しにされかけた上に、大きくなって会ったら会ったで「顔は似てても中身は可愛くないな」みたいなこと苦々しげに言ってくるオッサンなんて。
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