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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十二章 国主の一族たち

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462話 寝起きで情報共有

雨妹ユイメイはいつの間にやら、友仁ユレンが寝ている布団に顔を埋もれさせて爆睡していた。

 しかもスッキリとした気分で起きたら、先に起きていた友仁に寝顔を見られていた始末である。


「……おはようございます。

 申し訳ありません、寝てしまいました」


雨妹が謝罪をしながら照れ笑いをした。


「ふふ、一緒に寝たね」


すると友仁がそう言ってクスクスと笑う。

 「無礼者!」と怒らない、優しい皇子殿下で命拾いをした雨妹である。

 それから雨妹は顔を洗って気分をシャキッとさせてから、友仁にも顔を洗う水を用意して身なりを整えるのを手伝い、胡安フー・アンが待つであろう部屋へと戻る。


「よく眠っておられたようですね」


胡安が雨妹を見るなりそう声をかけてきたところを見ると、どうやら彼にまで寝顔を見られたようだ。


 ――私、いびきをかいたり、よだれを垂らしたりしていなかった?


 雨妹が己の不覚を恥じ入っているばかりだ。


「失礼します、立勇リーヨンです」


するとそこへ、扉を叩く音と共に立勇の呼びかけが聞こえた。


「どうぞ、お入りください」


その声に胡安が答えたので、立勇が室内へと入ってくる。


「雨妹、起きたか。

 主と一緒に寝るとは、側仕えとしてまだまだ未熟だな」


立勇は雨妹を見るなりそう言うが、表情を見るに叱責の言葉というよりも、雨妹をからかっているのだろう。


 ――立勇様にまで寝こけていたところを見られていたなんて、恥ずかし過ぎる!


 恥ずかしくて縮こまっている雨妹であったが、立勇に手招きされたのでそちらへと寄っていく。

 友仁は胡安から昼寝後のお茶を出してもらうようで、その様子を横目に雨妹は立勇に連れられて隣室へと移った。


「まずは、ジャヤンタ殿下は今の所変わりない。

 お前が気にしていた、寝すぎて出来たという傷も、リュが薬を作って塗っていた」


立勇が切り出した話に、雨妹は「そうですか!」とホッと息を吐く。

 どうやら雨妹がぐっすり寝ていた間に、立勇はジャヤンタの様子を見てきてくれたらしい。

 呂にも床ずれの知識があったようで、雨妹の意見がすんなり受け入れられたのは幸運である。


「それと呂が言うには、シェン殿下が語られた丹と宜のお国事情は、だいたい合っているということだ。

 ただ、王族の個人的な事情までは知らんと言われた」


むしろ呂は、リフィが王太子妃になるために迎え入れられたことで、丹は既に宜の属国となり下がったとばかり思っていたという。


「沈殿下が語られた内容は、最新情勢であるのだろう」


立勇の話を聞いて、雨妹は「ふぅむ」と唸る。


「崔は、丹が宜を押し返すとは考えていなかったんですね」

「まあ、それも丹と宜の国力の差故だろうな」


雨妹が眉を寄せながら述べるのに、立勇がそう返してからしかめ面になる。


「しかし、これで友仁殿下は容易に引き下がれなくなった」


沈が「最新の情報」という、それなりの対価を先に払ってしまった。

 これで友仁がなにもせずに都に帰ってしまったら、沈からその対価を「貰い逃げ」した形になってしまう。

 対等な皇子であるという立場上、それはよろしくない事態であるのだそうだ。


 ――そうか、情報の価値ってそれだけ重いんだね。


 前世ではインターネットで検索すれば、様々な情報が簡単に手に入った。

 けれどこの世界では、情報とは人が現地に向かい、その五感で直に確かめて手に入れるものであり、場合によっては命がけとなることも多いはずだ。

 だからこそ、呂のような「影」と呼ばれる集団を偉い人たちは独自に持っていて、より優位に立てる情報を集めようとするのだろう。

 そんな情報を出す隙を、沈は知り尽くしているということか。


「さらっとこちらを嵌めてくる人ですね、沈殿下って」

「むしろああでないと、この地を治められぬということだろう。

 自国からも他国からも、下手に言質を取られるわけにはいかないのは、理解できる」


いっそ感心してしまう雨妹に、立勇が思案するようにして語る。

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