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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十二章 国主の一族たち

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453話 罠に落ちて

実際のところ、丹は宜に旅立って以来一度も帰国しないリフィを心配し、「生きているのか?」と何度も問い合わせをしていたのだという。

 リフィが丹に向けての手紙を、配下に書かせるだけで済ませていたのも、丹からの疑いに拍車をかけた。

 その状況を宜に利用されたわけだ。


 ――リフィさん、せめて報連相はちゃんとしておけばよかったのに。


 リフィの身から出た錆ともとれるが、そのくらい宜での暮らしが楽し過ぎたのだろうか?

 もしくは、宜がリフィを騙しにかかり、容易に連絡を取らせないように仕向けていた可能性もある。

 手紙についても、「宜では主自らが筆を執ることを、良く思われません」とでも言っておけば、リフィは「そういうものなのか」と納得したのかもしれない。

 一方でこの駆け落ち騒動には、ジャヤンタ側にも思惑があった。


「ジャヤンタ殿下も、リフィを一旦王城の商人たちから離すのは良いことだと考えて、稚拙な駆け落ち話に乗ったのだ」


シェンがそう語る。

 ところが、これが大事になってしまった。

 リフィが王太子誘拐及び殺害罪で、宜から手配されてしまったのである。


「誘拐はいいとして、殺害!?」


いきなり話が飛んで、雨妹ユイメイはぎょっと目を剥く。


「……生きているよね?」


友仁ユレンが不安そうに雨妹へ確認してきた。


「もちろんです!

 ジャヤンタ様にはちゃんと脈があり、息をしているのも確認しておりますとも!」


雨妹はぶんぶんと首を縦に振り、生存を肯定する。


「ジャヤンタ殿下が実際に生きているかどうかはともかくとして、宜は『王太子は死んだ』ということにしたのだよ」


 そして沈がそうなった経緯を説明してくる。

 ジャヤンタはリフィと共に王都から離れようとしていた際に、丹国人を装った武装集団に襲われたのだという。

 商人連合が差し向けたのは間違いないだろうが、相当の手練れを用意していたようで、ジャヤンタはあの怪我を負うことになった。


「商人連合の方が、一枚上手であったようだな」


しかし、ここで商人連合にとっての計算外の偶然が起きる。

 ちょうどその頃、様子がおかしいと察した丹の兄王子が、リフィの救出を目的とした部隊を差し向けていた。

 襲撃を受けて大怪我を負ったジャヤンタを抱え、呆然とするしかないリフィの下へ、その部隊が駆けつけることができたのだ。


「しかしその者たちがリフィを丹へと連れ帰ろうにも、あちらも混迷を極めて安全ではない。

 迷った末に宜を脱出する先にと頼ってきたのが我だ」


こうして、やっと話がこの幡へとつながったわけである。


「リファレイヤからリフィと名を変え、我の下で下働きの異国人として仕えることになった。

 実際、異国人の下働きは大勢雇っているので、そうおかしな話ではなかったしな」


さらにはこの面倒を引き受ける対価として、丹から貰ったのがこの邸宅であったのだ。

 ボルカなどの邸宅管理の人員も揃いで貰ったので、それなりに良い貰い物であったらしい。

 ところでその時、ジャヤンタはリフィとは別の地へと脱出させた――はずだったのだが。


「リフィめが、勝手にジャヤンタ殿下を連れ込んでいたのだよ」


そう語った沈が、眉間に皺を寄せた。

 邸宅が元は丹の建物であったが故に隠し通路を良く知っており、沈に隠れて連れ込むのが容易であったのだ。


「供の者が言うには、王女様に泣きつかれて、断れなかったのだとさ」


その時はできるだけ早く避難しなければならない状況でもあり、一旦リフィの我儘を聞いて、まずは動いてもらうことを優先したのだという。


 ――リフィさん、そんなにジャヤンタさんのことが好きだったのかなぁ?


 それか、また別の可能性が雨妹の脳裏に浮かばなくはないものの、それは今考える必要はないことだ。

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