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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十二章 国主の一族たち

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451話 泥沼の底

こうして泥沼の王位争いになってしまった丹であるが、これを止めることができる人物がいたはずだ。


「丹の国王は、その時には一体どうしていたのですか?」


雨妹ユイメイがそう尋ねるのに、友仁ユレンが「あ、そうか」と声を漏らすのが聞こえた。

 これまで話に全く上がらなかったので、友仁は王の存在をすっかり失念していたらしい。

 この問いに、シェンは苦い顔をしてみせた。


「どうもしない、ただ状況を静観していただけだ」


沈曰く、現在の丹の国王は、「強い発言力で民を導く」というより、「周囲の意見を聞いて熟考する」性格だという。

 その性格故に、手をこまねいていたままに状況を悪化させてしまったようだ。

 これは別に、後者の性格が悪いわけではない。

 平和な世の中であれば、良き国王として名を残したのかもしれない。

 戦に発展してしまった状況には、適していなかったというだけだ。


「こればかりは、時代が悪かったとしか言いようがない。

 そして恐らくは、そこも含めて宜に狙われたのだろうよ」


そう零した沈は立勇リーヨンに淹れ直されたお茶を受け取ると、ぐいっと呷るように飲む。

 結果を言えば、宜の惜しみない援助によって弟王子が失脚し、兄王子が次期国王となった。

 しかし弟王子を支持していた者たちは当然不満が残る。

 そこへもまた、援助を申し出る勢力が現れた。

 宜の反王太子派を名乗る連中である。


「そこで弟王子一派が『王位簒奪を許すな』と勢いが付いてな、収まるものも収まらぬというわけよ」

「うわぁ……」


沈が語る泥沼に拍車をかける状況に、雨妹は言葉にならない。


 ――骨の髄までしゃぶるなぁ、宜の商人たち!


 その宜の連中が真に王太子と対立しているかはおいておくとして。

 負け戦を強いられた弟王子の勢力には、喉から手が出る程欲しい援助であったことだろう。


「両方の人たちに援助するって、宜はなんだか狡くないですか?」


友仁の素直な感想が、実に心に刺さる。


「そうだな、私もとても狡い行いだと思うぞ」


沈は友仁の意見の正しさを認めてみせた。

 こうして宜が横槍を入れなければそこまで拗れなかったであろう丹の王位争いは、現在まで続く内乱に発展してしまったのだ。

 余所の国の戦乱大好きな宜は、思い通り過ぎて笑いが止まらないことだろう。

 ところが、その宜も順調な国というわけではなかった。


「宜国内でも揉め事が起きていてな。

 他でもない、王太子が商人連合に物申すようになったのだ」


なんと、どこもかしこも揉め事だらけである。


「ジャヤンタ殿下は軍人でな、頭が固いところはあるが、男気のある御仁であるよ。

 しかも容姿も良いときて、民からの人気が高かった」


軍人であるがために、ジャヤンタは戦況を金ずくで強引に変えてみせる商人たちに、いくら「国益となる行いだ」と言われても、飲み込めない思いを抱いた。

 さらには現在の宜の国の在り様に危機感を抱き、いずれ他国から「戦乱を振り撒く悪しき国」だと認識されてしまい、「悪しき国は叩き潰してしまえ!」という世論になることを危惧するようになる。


「そこで、ジャヤンタ殿下は商人連合を議会から排除しようと画策したわけであるが。

 当然、商人連合はそんなジャヤンタ殿下を邪魔に思うわけだ」


こうなって商人連合がジャヤンタに対する牽制として使ったのが、リフィである。

 そもそも、丹の混乱を招く原因でもあったリフィは、その頃には宜で王太子妃になるべく花嫁修業をしていた。

 これは丹にとっては、実質的な人質であるといえよう。

 リフィは丹が本格的な内乱になる前に国を出ており、宜に教えられる情報通りに「丹は平和なのだ」と信じていたという。

 それに己の婚約で兄や母の立場は強固なものとなった。

 家族の、ひいては国の役に立ったのだと、疑ってもいなかった。

 まさか自分の婚約話のせいで国が混沌としているなんて、想像だにしなかったのだ。

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