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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十二章 国主の一族たち

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447話 朝食に挑む

雨妹ユイメイ友仁ユレンのやる気が上がったところで、朝食のためにシェンの部屋まで向かうこととなった。

 部屋の前で出迎えたのは、リンとリフィだった。

 二人とも、特に変わった様子は見えない。


 ――いや、リフィさんは目元を見ると、寝不足みたいだけれどね。


 けれどそれは、夜中の騒々しさで眠れなかった雨妹とて同じことであるので、そのせいだという可能性もある。

 がしかし、リフィが昨日までにくらべてどこか儚く見えるのは、気のせいだろうか?

 こうして雨妹が不自然に思われない程度で、リフィを観察していると。


「どうぞ、中で沈殿下がお待ちでございます」


林が友仁を促し、扉を開いてくれる。

 部屋の中では食事の用意がされており、卓には既に沈が座って待っていた。

 その沈が告げてくる。


「席に招くのは、青い目を持つ者だけだ。

 内密な話をしたいので、他は遠慮するように」


この言葉に、リフィと胡安フー・アンが目を見張った。


 ――青い目っていうことは、私も含まれるのか。


 沈は上手く限定したものだが、さてこれに頷いていいものか、と雨妹が思考を巡らせていると。


「ああでもそうか、給仕はいるな」


すぐに沈が「初めてその問題に気付いた」という顔になり、しばし考えるそぶりをしてみせた後。


「そうだな、そなたに頼もう」


沈が指差した先にいたのは、立勇リーヨンだった。


 ――まあ、立勇様なら給仕も完璧にこなすだろうけれども。


 沈はそれがわかっていて指名したのか、はたまた太子付きであるという身分を信用したのか、そのあたりが気になるところだ。


「……承知いたしました」


立勇は内心がどうかはともかくとして、微かに眉を動かしただけで、給仕のために進み出た。


「他は出ていくように」

「承知しました」


沈が指示するのに、一人驚きを見せなかった林が即答する。


「……わかりました」


これに一拍遅れて、リフィも返事をした。


「では雨妹、友仁殿下を頼みますよ」


一方、胡安が雨妹にそう告げてくる。


「出来る限りのことをします」


雨妹はそう応えて大きく頷くのだった。



こうして皇子それぞれが主従で別れたところで、朝食の席に着くこととなった。

 まずは、立勇が食前のお茶を用意するのだが。


「……」


その立勇が慣れた様で淹れる様子を、友仁が目を見開いて凝視している。


 ――まあ、近衛がお茶を淹れてくれるとか、滅多に見られる光景じゃあないよね。


 近衛とはむしろ、給仕される側だ。

 その近衛が側仕え並み、いやそれ以上に給仕が上手いなど、普通は思わないだろう。

 さらには自分で給仕に指名した沈までもが、意外そうな顔になっていた。

 立勇はそんな若干居心地が悪そうな状況で、それぞれの席にお茶を配ると、後ろに下がって控える。

 そのお茶をしばしじっと見ていた友仁が緊張したように杯を恐る恐る持ち上げ、お茶に口を付けている。


「美味しい」


そしてボソリとそう零す友仁に、雨妹は内心で笑みを零す。


 ――そりゃあ、いつも太子殿下に淹れているお茶ですからね。


 雨妹は皇子二人に自慢したくなりつつ、自分もお茶を飲む。

 いつもの味で安心してしまい、雨妹はこんな状況だというのに気持ちが和む。

 そして沈はそのお茶の味に眉を下げ、どこか悪戯が失敗した子どものように見える。

 立勇の給仕が、想像していたよりも様になっていたのだろうか?

 もし、いまいちな味のお茶になることを期待していたのであれば、雨妹は「残念でした!」と舌を出したい気分である。


「うむ、都の味だ、実に美味い。

 普段リフィの淹れるものばかりを飲んでいると、こちらが新鮮に感じるな。

 万能な側近がいる太子殿下の羨ましいことよ」


しかし口に出しては立勇を褒め称えた沈に、友仁が首を傾げる。


「林は、お茶を淹れてくれないのですか?」


そこが気になったらしい友仁が問うのに、沈が途端に嫌そうな顔になる。


「淹れてくれても、我は絶対に飲まぬ。

 アレの茶は猛烈に不味いのだ」

「そんなに……?」


雨妹も驚いてしまう。

 雨妹が初めてお茶を淹れて太子に飲んでもらった時にだって、ここまでの反応をされなかったのだが。


 ――少なくとも私のお茶は、林さんよりも上だということでいいよね?


 ちょっと自信をつけた雨妹であった。

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― 新着の感想 ―
[一言] >――少なくとも私のお茶は、林さんよりも上だということでいいよね? それはどうだろう? 太子殿下が優しいだけなのかも知れないよ。
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