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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十一章 南への旅立ち

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423話 やっと本題

雨妹ユイメイ立勇リーヨンの意見を聞いて、改めてリフィの方を見た。

 そう言われてみれば、動きの端々が上品に思えてくる。

 同じく友仁ユレンも気になったらしく、リフィを目で追っているのがわかる。


 ――異国の高貴な身分の女性が、皇族の側仕えをしているのかぁ。


 それはなんとも、想像が捗る状況ではないだろうか?

 華流ドラマオタクの血が騒ぎ、雨妹の鼻息が若干荒くなる。

 雨妹たちがそんな話をひそひそとしていると、シェンがやっとこちらにやって来た。


「やあ、呼んだのに放置してすまなかった。

 お茶を楽しんでいるか? リフィ、我にも淹れてくれ」


沈はカラリとした笑顔の気軽な調子で言うと、雨妹たちの卓の隣に、別の卓を寄せる。


「お待たせして申し訳ない。

 この殿下は説教できる時にしておかないと、逃げるものでして、まことに申し訳ない」


もう一人は申し訳なさそうに俯き、ひたすらに謝る。

 彼と沈との態度の違いといったらない。


「謝罪は何度もされれば、鬱陶しいものでしてよ」


そこへぴしゃりとリフィが叱る。

 ここまでの様子を見ていても、普段の力関係が垣間見えようというものだ。

 三人三様に、なんとも温度差が大きい主従である。

 この立勇と明に説教され、今もリフィに叱られた男は名を林俊リン・ジュンといい、元は地方官吏であった文官であるという。

 つまり沈が引き抜きをかけたということなので、きっと優秀な人なのだろう。


「何故私は、地方官吏で満足しなかったのか、ああ今更ながらに悔やまれる」


それと同時に、なんだか湿っぽい性格の人のようだ。


 ――いや、湿っぽいくらいで案外ちょうどいいのかも。


 沈があのような人であるので、お付きまでいけいけな性格であれば、暴走して止まれない未来しか見えない。

 雨妹が三人それぞれに個性的な主従を観察していると、友仁が笑顔で沈に話しかけている。


「叔父上、奶茶とは美味しいですね。

 好きになりました」

「ほう、気に入ったのならばよかった。

 その土地の味を好めることは、土地に馴染むのに優位だからな」


今しがた飲んだ奶茶の感想を述べる友仁に、沈も笑顔で友仁に応じる。

 こうしてなんとか場が整ったところで、やっと本題に入った。


「簡単に言えばだね、あの出迎えに現れた女たちは、我の嫁候補たちだ」


 ――そうだろうとは思ったよ。


 沈の言葉は予想通りとも言えるものであり、雨妹の中に驚きはない。

 それは立勇と明、胡安も同様だったらしく、一人友仁だけが「そうなのですか?」と驚いていた。

 沈はその友仁の反応に救われたような顔で、話をつづける。


「そうなのだよ!

 集めてもおらぬのに勝手に候補として名乗りを上げ、幡に屋敷まで構えて居座っている女たちだ。

 かなりしつこくてな。

 まあ狙いはここ幡の統治権だろうが」


どうやら揚州を狙っているのは、チー家だけではないようだ。

 沈曰くこの地域は古来より、国境線が頻繁に変わっているのだという。

 そこは苑州と同様だが、一つだけ苑州とは違う点があるという。


「このあたりの民の気性というものが、少々厄介でな」


そう言って苦笑する沈の様子を見て、雨妹がふと思い浮かべたのは佳の街で出会った徐州の民のことだ。

 彼らとて、かなり皇族嫌いを拗らせていたものだ。


「気性というのは、佳の方々と似ているのでしょうか?」


雨妹が口を挟むと、沈は眉を上げた。


「お主は佳の民を知っているのだったな。

 ふむ、確かに皇族嫌いというか、『皇帝なんぞおらずとも困らぬ』という態度に共通点はある。

 だがあちらとは似ているかと言われれば、大いに違うな」


共通点はあるが似ていないとは、なんだかややこしい言い方である。

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