表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十一章 南への旅立ち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

414/683

410話 よくわからない展開

 一方で、雨妹ユイメイに向かって微笑みかけるシェンの様子を目にした女は、その顔を途端に歪ませる。


「沈殿下、この者は一体……?」


女が口の端を引きつらせながら問いかけるのに、沈は笑顔で返す。


「都から同行している、大事な客人だ」


 ――違います、友仁ユレン殿下のお供の一人です!


 友仁の供をまるっとひとくくりにして「客人」という言い方もできるかもしれないが、今のはあきらかに誤解を招くのがわかっての言い方だろう。

 しかし客人というには、雨妹の格好は医官助手のものであり、これだって普段の宮女のお仕着せよりはいい服なのだが、高貴な身分には見えない。


「ふん!」


雨妹の身なりから、己よりも格下だと考えたのだろう女が、鼻を鳴らす。


「どうせ都を訪ねた沈様に、強引に迫ってついてきた輩だろうに。

 沈様はお優しいが、そうした輩をあしらうのが苦手と見える。

 やはり、わたくしがお手伝いをして差し上げたいものよ」


ツンと顎を上げて話す女だが、声が少々震えていて、どうやら動揺しているらしい。


 ――なにに動揺しているんだろう?


 あちらが雨妹の身分を誤解しているのはともかくとして、皇子なのだから、周りに女が集まることなんて日常茶飯事だろうに。

 いや、女がどうということではなく、やはり権力者の持つ権力という甘い蜜を吸いたいと、男女共に大勢寄ってくるものなのだ。

 それなのに、雨妹一人が側にいるからといって、それが一体なんだというのか?

 内心で首を捻る雨妹に、背後からリュがささやく。


「沈殿下は、女性を一切寄り付かせないってんで有名なお方で」

「そうなの?」


雨妹が出会ったのが花の宴の場なので、女性を寄り付かせないという印象がなかった。

 なにしろあの場は、女性がほとんどであったので、寄り付かせないことが不可能だろう。

 けれど今回の旅の構成員について考える。

 雨妹は一行の男女比などあまり気にかけなかったけれど、よくよく思い返せば、沈殿下のお供に女性はいなかったような気がする。

 これだって旅をするための体力面を考えて、男性で揃えているという理由もあり得るはずだ。

 けれど呂が言うくらいなので、そうした噂は有名なのだろう。

 そしてその沈が、雨妹という女性を気にかけて見せたのが、あちらには驚くべき点だったらしい。

 女を傍に置かないと聞いて、雨妹がまず思い浮かべる理由は「子孫を残さないため」というものだ。

 沈は今まで独身を貫いていると聞いた。

 やはり己の子孫を残すことに、慎重になっているのだろうか?

 それ故の、女性に対する距離感なのかもしれない。

 そんな風に思考する雨妹であったが。

 ところで沈の登場で、宿の者たちは「これで問題が解決する」と気が抜けたのか、相手の女を留めていた人の壁が解けかけていた。

 そこへ女が意外な機敏さで足を進め、その解けかけた人壁を突破した。


「こんな貧相な小娘が……!」


そう零す女は睨みつけながら、雨妹に歩み寄ってくる。


「……」


目立ちたくないらしい呂が、無言でスッと気配を消したのと同時に。


 スラリ


「無礼者が、それ以上近付くのを禁じる」


立勇リーヨンが腰の剣を抜き放ち、女に警告した。


「なっ……近衛!?」


剣を抜かれるとは思ってもいなかったのか、女がギョッとして剣の方を見る。

 ここで初めて、女は立勇の姿が目に入ったようだ。

 さらに近付いたことで、雨妹の姿もよりはっきりと見て取れたらしい。


「青い、目……!?」


女は驚愕の表情になり、顔色が真っ白になり、後ずさる。

 どうやら青い目の雨妹が皇子と並ぶことで、彼女の中で意味を持ってしまったようだ。

 雨妹の身分はただ目が青いだけの一般人なのだが、そんなことは言わなければわからない。


「己の首をまだ繋げていたければ、疾く去るがいい」


剣を女の目の前に突き付けて告げる立勇の様子に、女に同行していた者たちが先に恐れをなしたらしい。

 そろりそろりと後さずり、やがて足早にここから去っていく。


「ちょっと……!」


その者たちの後を追うように、女もそれに続くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 秘匿された公主殿下だもんなー
[一言] まあ皇族なのは間違いないからw
2023/12/08 15:33 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ