表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十一章 南への旅立ち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

408/682

404話 褒めはいくらでも欲しい

夕食の後、雨妹ユイメイ友仁ユレンと共にシェンの部屋から退出した。

 これからまずは友仁を部屋まで送り届けて、改めて体調を診ることとなる。

 そのために友仁の後ろについて歩いていた雨妹に、隣を歩く立勇リーヨンが小声で話しかけてきた。

 

「お前、食事の席ではずっと無言で食べていたな」


このように言われてしまったが、確かに自分でもその自覚があった。


「だって、口を挟みたくなるのを我慢するのに、口に食べ物を入れていたんです。

 おかげで美味しかったですけれど、その美味しさに集中できませんでした」

「そんなことだろうと思った」


雨妹の言い訳に、立勇が苦笑する。


「せっかくの食事が楽しめないことなど、ままあることだ。

 私にも経験がある。

 友仁殿下を差し置いて食事を楽しむのも、嫌味になるだろうから難しいところだな」

「そうなんですよねぇ」


苦笑して語る立勇に、雨妹は大いに頷く。

 立勇も雨妹と似たような思いをしたことがあるのだと知れば、なんとなく気が楽になったように思える。

 そんな雨妹に、立勇が告げた。


「雨妹、本来下っ端宮女である身では、せずともよい苦労だ。

 色々と忠告はしたが、お前は実によくやっている」


頭をポンポンと軽く叩かれ、雨妹はちょっと目を細めると。


「私は褒められて伸びる質なので、誉め言葉はいくらあっても嬉しいです。

 さあ、いくらでもどうぞ!」


さらなる褒め行為を要求する雨妹に、立勇は「こいつめ」と小突いてきた。


「子どもみたいなことを言う奴め」

「子ども心を忘れない純真さ、と言ってほしいですぅ!」


雨妹は頬を膨らませて言い返すのだった。



それから友仁の部屋に着き、雨妹は早速体調を尋ねた。


「ご気分はどうですか? 苦しさや痒さはありますか?」


雨妹がそう確認すると、友仁が「なにもない」と首を横に振る。


「けど、普段よりも食べ過ぎたかな」


そう言ってお腹をさする友仁の仕草が、なんとも可愛らしくて、雨妹は思わず頬を緩めてしまう。


「では念のために、胃薬を渡しておきます。

 しばらくしてどうしてもお腹が重かったら、飲んでください」


雨妹はそう説明して、隣に控えていた胡安フー・アンに胃薬を手渡しつつ、友仁の手を取った。


「食が進んだのは良いことです。

 食事は旅で消耗した体力を回復させますからね……私は、殿下が食事を厭わずにいてくださったことが、とても嬉しいです」


語りながら雨妹は、友仁の手をギュッと握りしめた。

 文君ウェンジュンから食事を虐待の手段に使われたのだ。

 友仁はその後、食事そのものを「嫌なもの」と思ってもおかしくなかったのに、友仁はそうならなかった。

 これに、友仁がにこりと笑みを浮かべて返す。


「だって、雨妹が言ったじゃないか。

 大きくなって健康になれば、私は卵に勝てるかもしれないって。

 食べられるものだってあるから、そちらを美味しく食べればいい。

 それに、雨妹と一緒に饅頭を食べるの、好きだもの」


雨妹の手を握り返してくれる友仁は、なんと優しい子だろうか。


「もちろん、私も好きですともぉ!」


雨妹は感情が腹の底からぶわりと湧き上がってきて、思わず友仁を抱きしめた。

 抱きしめられた友仁は、くすぐったそうにクスクスと声を漏らす。

 雨妹の行いは、普通であれば無礼な振る舞いだろう。

 しかし背後で立勇は「はぁ」とため息を吐き、胡安は驚いた顔をするだけに止めてくれている。


 ――はあぁ、私の弟って可愛い~!


 世界中に聞こえるくらいの声で、叫びたくなった雨妹なのだった。

 このようにして、皇子一行の旅の初日が終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
友仁殿下の初恋は雨妹になりそうな予感がしますね。実は姉だと知れるのはいつの日か。 それにしても立勇は雨妹に対して触れることが多い気がしますね。人前でも平気でするのは無意識なのか否か。 端から見ると仲…
[良い点] あれ?途中でイチャイチャという名のコントみたいなやり取りがw [一言] 立勇さんは雨妹の横で癒され中。 何も深読みしなくていい相手って息抜きに大事ですね。
[一言] 弟くんの性癖が歪んでしまう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ