表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十一章 南への旅立ち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

399/682

395話 お誘いを受ける

そんな友仁ユレンに、雨妹ユイメイはさらに告げる。


「うがいをした後で、蜂蜜湯を飲みましょうね。

 外に出た際には、あまり口を開けないようにするといいですよ。

 もしくは、鼻と口だけ薄布で覆うようにするとか……」


できるだけ友仁が苦しくない方法を模索する雨妹に、同行者である立勇リーヨンが声をかける。


シェン殿下の側近方であれば、そうした工夫に詳しいかもしれない。

 尋ねてみるのもよいのではないか?」

「ああ、そうですね!」


立勇の意見に雨妹がポンと手を叩くと、そこへ友仁の傍仕えが口を挟んできた。


「沈殿下でしたら、友仁殿下に『この後の夕食をぜひ一緒に』と仰られております」


なるほど、それならば話を聞くのにもちょうどいいかもしれない。

 雨妹がそのように考えていると。


「雨妹は夕食の時、一緒にいてくれる?」


友仁がそう言って、おねだりするような顔で見上げてきた。


「うっ……」


友仁のおねだり攻撃に、雨妹は息を呑んで身をのけぞらせた。


 ――夕食を一緒に、かぁ。


 雨妹もさすがにこれには即答できず、立勇を窺う。


「……」


友仁も心細い顔で立勇を見つめている。


「うぅむ……」


こうして二人にじぃーっと見られた立勇は、唸り声を上げてしばし迷う様子を見せてから、やがて口を開く。


「殿下は慣れない場所での食事である上、食事の管理も役目の内といえるだろうし、お望みとあれば」

「雨妹と一緒がいい!」


立勇が皆まで言い切る前に、友仁が前のめりに告げて、雨妹の手をギュッとつかむ。

 そのまるで逃がすまいとするような友仁の行動に、雨妹は少しでも気持ちを和ませようと、屈んで微笑みかける。

 こうして立勇の許可が出たならば、あとは友仁の傍仕えである男がなんと言うかであるが。


「では沈殿下の側に、意向をお尋ねしておきましょう」


その傍仕えは、雨妹の同行に反対しなかった。

 全てが初めてのことばかりで、不安を感じる友仁の気持ちを汲み取ったらしいが、なかなか心配りのできる人であるようだ。

 もしこれが己の出世で頭がいっぱいの者であれば、友仁を出世のための駒と見なして、「あちらの皇子よりも優れた行動をしてみせろ」と発破をかけるのかもしれない。


 ――いい人を選んでもらえたなぁ。


 これはひょっとして、本気で友仁を役立つ皇子となるように教育するつもりなのかもしれない。

 成長のためには飴と鞭の使い分けが必要で、この人はそれが上手い人なのだろう。

 友仁は旅の道中をきちんと計画に沿って行動してみせたのだから、食事時くらい望みをかなえるということか。

 なにはともあれ、これで沈が否と言わなければ、雨妹が友仁と夕食を一緒にとることが決定したわけだ。

 そしてあの沈ならば、否とは言わない気がする。


「友仁殿下、張雨妹が夕食にお供いたしますので、よろしくお願いしますね」

「こちらこそ」


雨妹がそう告げると、友仁も笑顔を返してきて、ホッと安堵の息を漏らす。


 ――偉い人とのご飯かぁ。


 一方で雨妹は、今から少々緊張してくる。

 偉い人と食事を共にすることくらい、今までだってあったのだが、こうして正式な食事の席に招かれることは、実はあまり経験がない。

 たいていは相手がお忍びであったり、ちょっとしたお茶を一緒にする程度であったりだったのだ。

 それこそ、佳以来のことかもしれない。

 どうか夕食が美味しく食べられるようにと、雨妹はそれだけを願うしかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ