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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十一章 南への旅立ち

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385話 集合してみたら

そんなわけで数日が過ぎ、雨妹ユイメイ友仁ユレンのお供として旅に出る当日の早朝。

 雨妹は包みを背負って木箱を片手に持ち、待ち合わせ場所である乾清門へと向かうと、そこには既に大勢の人が集まっていた。

 軒車を数台、荷車も数台ある周囲で、様々な人が行き交っている。


 ――そっか、前に太子殿下と佳へ出かけた時は、お忍びだったもんね。


 あの時に雨妹が顔を合わせた面子は、太子と立勇だけだった。

 それが今回はお忍びではなく、堂々と向かうのだ。

 当然護衛やらお付きやら、皇子二人分が大勢同行するわけで、こうして人数も多くなるわけだ。

 ということで、さて雨妹はどのあたりに合流すればよいのだろうか? と周囲を見渡していると。


「雨妹、こちらだ」


聞き慣れた声がしたので振り向けば、そこには鎧を着込んだ立勇リーヨンが立っていた。

 雨妹は今回、知り合いがいると思っていなかったので、立勇がいることに驚く。


「あれ、ひょっとして立勇様も同行するのですか?」


それとも単なる見送りかと考えた雨妹の問いかけに、立勇が頷いた。


「ああ、友仁殿下側から要望があった。

 相談相手になれる者が欲しいとあって、殿下の周囲の者から私が選ばれたのだ。

 ミン様もいらっしゃるぞ、あの方こそ陛下に付き添って国中を駆けまわっているからな」

「ほうほう!」


立勇の説明に雨妹が視線を巡らせると、確かに明の姿を発見できた。

 後宮から出たことのない友仁であるから、守ってくれる近衛にも知り合いはいないだろう。

 さらにはフー昭儀の実家への協力も頼みにできない様子なので、こうして皇帝と太子の伝手を頼ったのだろう。

 本来はこうして他者に伝手を頼むことは「家の恥」とされるのかもしれないが、恥を恐れて友仁を危険に晒す方が本末転倒だろう。


 ――うん、やっぱり胡昭儀はちゃんとお母さんだね。


 ただ、今回の同行者に立勇が選ばれた理由として、明から「雨妹が同行するなら、説教役として立勇が必要だ」と強く推されたという事情もあるが、それは雨妹には語られなかった。

 それはともかくとして。


「私、どの位置で同行すればいいんですかね?」


雨妹の疑問に、立勇が答える。


「今回、側近以外の供は荷車での移動となるので、お前もそちらだ。

 一応風よけの布くらいは張ってあるが、まあ腰は痛くなるな。

 不満があるなら、今のうちに言え」

「いえ、荷車大歓迎です、自由でいいじゃないですか!」


立勇の言葉に、雨妹はブンブンと首を横に降る。

 軒車近くにいて偉い人に囲まれて会話に困るくらいならば、荷車の方が断然いいというものだ。

 うっかり軒車に割り振られないようにと、雨妹が前のめり気味に主張すると、立勇に「わかった、わかった」と一歩引かれた。

 ちなみに、今回雨妹の身分は医局の臨時助手であり、友仁の体調管理のために同行している形となる。

 とはいえ、友仁側はやはり雨妹を堂々と付き添わせることは避けたらしく、それでこのような待遇なのだろう。

 友仁は皇子として、自分の身の回りを己で整えて安全を図る方が楽だが、一方でシェンの計らいに身をゆだねて信頼を表することも必要で、この両方を上手い具合に均衡をとるのは案外難しい。

 同じ皇子という立場だからこそ、身分というのがややこしいのだ。


 ――ああやだやだ、一般人でいるのが一番気楽だって!


 雨妹としては友仁と沈の皇族としての関係性が不確かな中で、両者の摩擦の間に放り込まれるのは避けたい。

 そうした揉め事は、外側から見るくらいでいいのである。

 というわけで、雨妹は素直に荷車へと案内された。

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