表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十一章 南への旅立ち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

386/682

382話 合流できた

 なにはともあれ、雨妹ユイメイ友仁ユレンが二人でニコニコして顔を見合わせていると、太子が声をかけてきた。


「友仁、人との仲が拗れる時は、些細なことでも取り返しがつかなくなるまで拗れることもある。

 そうなる前の早めに動いたことは、友仁の勇気の結果だ。

 偉かったぞ」


確かに、友仁がこの件で行動しなかったら、「母上に嫌われた」と思ったまま百花宮の外に出るわけで、そうしてフー昭儀から離れてしまうと、真実がなにかということを確かめられなくなる。

 シェンの口から事情が語られたとしても、友仁が果たしてどれだけ沈の話を信じるだろうか?

 友仁から沈についての話が出てこないので、恐らくは接触がほぼないのだろう。

 雨妹が友仁のいたごみ焼き場を使おうと思ってやってきたのは運であっても、行動しないと運だってつかめないのだ。


「兄上、ありがとうございます! へへへ……」


太子に褒められ、友仁が照れたように俯いた、その時。


「友仁様あぁ~!」


遠くから、誰かの泣き叫ぶ声が響いてきたかと思えば、トトト、と軽い足音が徐々に近づいてくる。

 そしてステーン! と転げた音がしたあとでひと騒ぎあって、やがてこの部屋の扉が開かれる。


「やっとお会いできましたぁ~!」


そして現れたのは、友仁の側付きの宮女である。

 登場がなんとも賑々しい娘は、額が少々赤くなっている。

 どうやら先程転げて額を打ったらしい。


如敏ルーミン大丈夫? はぐれてごめんね?」


友仁は謝罪を口にしながら、額を赤くする宮女の如敏を心配そうに見る。

 一方、雨妹も見知っている友仁付き宮女の如敏は、その目にぶわりと涙を溜めた。


「どこを探してもいらっしゃらないので、もうどうしようかと……!」


如敏は格好も若干よれているので、本当にあちらこちらを探していたのだろう。

 ただ、どうやらかなり早い段階で友仁と逸れたようなので、如敏が探していた場所は全く見当違いの場所であった可能性が高い。


「ほら、泣かないで」


友仁が懸命に慰めているが、これではどちらが主なのかわからない。

 この主従の様子に立彬リビンは眉をひそめ、太子は苦笑するばかりである。

 それから如敏が落ち着いた頃合いを見図り、友仁の口から太子宮までやってきた事情が語られた。


「まああの方ったら、そのようなことを吹き込んだのですか!?」


友仁が心を痛めた切っ掛けである女官について、如敏は目をつり上げた。


「今は宮が一丸となって対処しなければいけないと聞いておりますのに、余計なことをして!

 大丈夫、殿下が意地悪をされたのだと、姉様方にちゃあんと言いつけておきますからね!」


プンプンと怒っている如敏は、どうやら友仁が意地悪を言われた現場に立ち会っていないようだ。

 むしろ、友仁が一人でいる瞬間を狙ったのだろう。


 ――その女官とやらは、大方胡昭儀が失脚した後釜を狙っている口かな。


 雨妹はそのような想像をする。

 以前に友仁の側付きの女官であった文君ウェンジュンといい、胡昭儀には身内に敵が多いようだ。

 それはともかくとして。

 友仁もこれから百花宮をしばし留守にするとなれば、その準備で忙しくなるだろう。


「友仁、旅をするのは初めてだろう?

 傍仕えたちに話を聞いて、荷造りを始めなさい。

 宮女や女官たちに任せても困らないだろうが、己の身を己で整えるのも訓練だ」


太子にそう告げられ、友仁も旅の支度という作業に思い至ったらしく、目を丸くしてから大きく頷く。


「はい、やってみます!」


意気込んで表情が硬くなってしまった友仁だが、こんな旅立つ前から硬くなっていては旅に出た途端にくたびれてしまうだろうに。


「友仁殿下、きっと旅は楽しいですよ。

 ここでは見られない景色がたくさんあります」


雨妹がそう語ると、友仁は硬くなった頬を微かに緩めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ