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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十章 争乱の宴

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325話 さあ休憩……あれ?

というわけで。

 雨妹ユイメイジンは下っ端用の飲食の卓を目指して移動しながら、人が大勢いる庭園を遠目に眺めていく。


「お妃様って、あんなにいたんだね」


静が人の群れを見て、感心した風に呟く。

 どうやら作業中は皿ばかりを見ていて、周りを全く気にしていなかったようだ。

 けれど確かに、こうした宴の場でもないと、人数を把握する機会はないだろう。

 これでも各庭園に人を散らせているのだから、雨妹たちに見えているのはごく一部なのだ。


「陛下の子どもって、この人たちの数だけいるんだから……多いよね」


静が皇子や公主の軒車行列を見た時の疑問の答えが、改めて今口から突いて出た。


「まあ、お妃方の全員に子どもができるとは限らないんだけれどね。

 子どもが生まれるかどうかなんて、ある意味運だし」


雨妹が補足すると、静は「そんなものなの?」と首を捻る。


「じゃあ半分で数えて……やっぱり子沢山だ。

 そんなに兄弟姉妹がいたらさ、皆名前とか憶えているのかな?」


静が両手で数えながらの素朴な疑問に、雨妹は「どうだろうねぇ」と同様に首を捻った。

 子ども同士で顔を見たことがないなんてことはありそうだ。


 ――少なくとも私は、自分の兄弟姉妹について知っているのは、ほんの少しだよね。


 さらに言えば、皇族認定された方々は雨妹を姉妹に数えてすらいないだろう。


「私の弟は宇だけだけど、それでいいな。

 沢山いると大変そう」


そして静はというと、一通り数えて満足したようで、そう結論づけて頷くのだった。



雨妹たちがそんな話をしながら、歩いてたどり着いたお目当ての卓には、特に誰か卓の世話人がついているわけではないものだ。

 卓の上に並ぶ料理も、妃嬪や皇族たちの集う卓のように華やかなものではないが、饅頭や包などのつまみやすい食事と、花茶が置いてある。


「う~ん、料理を見たらお腹が空いてきた」


雨妹は自分のお腹をさする。

 皿拭きに熱中している間は忘れていられた空腹が、今復活してきているのだろう。

 卓の傍らには水の入った瓶もあって、あれは恐らく「勝手に飲み食いして自分で皿を洗って行くように」ということなのだろう。


「静静、なにを食べる? 豆沙包ドゥサーパオは美味しいよねぇ」


雨妹は静に皿を渡すと、自身で豆沙包を箸で取った。


「この色の違う小さい包、一つだけ取るのかな?」


静が気になった包の皿をまじまじと見ている。


「それ、味違いの包だと思うよ。

 一つだけしか駄目なわけじゃあないから、試しに二つくらい食べてみたら?」

「へぇ~」


静が包を選んでいる間に、雨妹は花茶を淹れるためにお湯を沸かす。

 ちゃんと小さな竈があるのだ。


 ――ピクニックみたいで楽しいなぁ。


 そうそう、ピクニックといえば。

 去年の花の宴では友仁皇子が、お付きの娘と二人でこぢんまりとした宴を楽しんでいるのに遭遇したが、今年はどうしているだろうか? 案外あれに味をしめて、今年もお付きと二人で楽しくやっているのかもしれない。

 雨妹がそんな様子を想像して、小さく「ふふっ」と笑う。

 そして、さあ豆沙包にかぶりつこうとした、その時。


「そこの宮女よ」


ふいに聞き覚えのない男の声が響く。

 雨妹は「宦官の誰かが食べ物をつまみに来たのだろう」と思い、「なんでしょうか?」と振り返った。

 しかし振り返った先にいたのは、宦官の服装ではない。

 供の宦官連れで、見栄えのする格好の男である。

 すなわちこの男は、皇子の誰かということだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] もう、帰ってきたんですか?! 否!別の皇子の可能性だけは、有る。有る……はず。有る……と、いいなぁ。 ま、頑張れ。
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