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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第九章 苑州の乱

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284話 遊びながらで

本日、「百花宮のお掃除係」8巻が発売されます!

今回も書きおろしエピソードがありますので、どうかお楽しみにね!

こうして、日記を書くことになったジンだっだが。


「ふはっ、なにこれ、ははは!」


雨妹ユイメイの耳に、隣の静の空間からたまに忍び笑いが聞こえてくる。

 文字見本をパラパラとめくって、面白そうな絵の文字を書くのが、今の静の中で流行っているのだ。

 書き始めると楽しくなったらしい。

 日記の「その日にあったことを記す」という目的からは離れているかもしれないけれど、やり始めはそんなものだろう。

 たまに意味が分からない絵があったりして、「これなんの絵?」と衝立の向こうから顔を出して、雨妹に聞いてきたりする。

 こうして書ける語彙を増やしたら、ダジャに手紙を書くそうだ。

 そうかと思えば。


「ねえ、見て見て!」


そろそろ寝ようかという頃に、衝立の端からニコニコ顔な静が姿を見せ、ぐいっと手を伸ばして来た。

 その手に握られている木簡には、なにやら絵が描いてある。

 どうやら文字見本の絵の方を真似て描いたらしい。


「ふふ、上手だねぇ静静」

「だろう!? 今度ダジャにも見せてやるんだ」


静はそう言ってまた引っ込む。

 今はどうやら「筆を使う」という行為自体が楽しいようだ。


 ――日記や落書きなんかは、ああやってこっそり書くから楽しいんだもんね。


 最初はああして遊びながらでいいのだ。

 そのうち青春の時期に誰しもが手を出すという、詩なんかを書き始めるかもしれない。

 そうそう、遊びといえばリバーシだが。

 試しに美娜メイナもリバーシに誘って遊んでみたら、ものすごく反応が良かった。

 

「いいねぇこれ、暇が潰れて」


雨妹と熱戦を繰り広げた美娜が言うには、料理には煮炊きの待ち時間もあるもので、その間の暇つぶしに最適だとのことだ。


 ――暇つぶしの手段も、見つけるのがなかなか大変だもんね。


 なにしろ同じことばっかりやっていると飽きてしまうので、暇潰し手段は複数あった方がいい。

 けれど今のやり方で地面に格子を描いてやるのも腰が痛くなるので、麻布に格子を描いて、それを盤にして遊ぶように工夫する。

 あとは、ちょうど良い大きさの石をとにかく集めることだ。

 石を拾うのは、掃除係であればなんてことない行為である。

 できれば丸い方がいいので、あまり頑丈ではない石を選んでいく。

 塗る色は今のところ墨を塗っているが、これも色々工夫ができるだろう。



そんなこんながあったところで、本日は休日である。

 この日は、新居に美娜が遊びにきていた。


「へぇ、敷物なんて奮発したねぇ」

「そうですか? へへへ……」


雨妹宅をキョロキョロと覗く美娜は立派な敷物に感心しているが、貰い物であることは言わなくてもいいだろう。

 しかし今美娜がいるのは、別にただ遊びにきただけではない。

 美娜を新居に誘うついでに、とある「お願い」をして、今台所に静と共に三人でいるところだ。

 そのお願いとは――


「今日は、饅頭を作りましょう!」

「饅頭作りは料理の基本さね」


雨妹が声高らかに宣言をすると、美娜も「うんうん」と頷く。

 そう、美娜に静への饅頭作りの指導を頼んだのだ。


「饅頭って、私でも作れるものかな?」


静が不安そうに尋ねてくるのに、美娜が「もちろんさ!」と断言する。


「どんなに不器用でも、饅頭は作れるもんだ。

 じゃあ、静静は作ったことがないってことだね。

 里じゃあどんなものを食べていたんだい?」

「どんなもの、っていうか」


美娜の問いに、静はなんと言おうかとしばし考える。


「色々なものを煮るの。

 饅頭って里を出て初めて見たけど、フワフワして不思議だね」

「ありゃあ……」


静の答えに、美娜が軽く眉を上げる。

 食生活が相当厳しかったのだと察したらしい。

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