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281話 石遊び

まず雨妹たちがやったのは、石拾いだ。

 静曰く、宇とやっていた遊びというのは、石がたくさんあった方が面白いのだという。

 別に石の形に拘りはないけれど、できれば手でつまみやすいものがいいらしい。

 というわけで、雨妹はあまり整備されていない石がたくさん転がっている辺りに行って、静と石拾いをする。


「うん、まずはこれくらいでいいかな」


静が石集めに満足したところで家に持ち帰って、次にやるのは泥作りだそうだ。


「泥をどうするの?」


雨妹は言われた通りに泥を作りながら、使い道がわからずに尋ねる。

 これに静が答えるには。

 

「こうやって、石の片方だけ汚すんだ」

静はつまんだ石をそっと泥につけると、汚れ具合を確認してから、また次の石を泥につけていく。


「へぇ、なるほど?」


よくわからないながらも、雨妹も真似をして石を泥につける。

 そうやって、片方が泥で汚れて、片方がきれいなままの石が出来上がっていく。

 全ての石に泥をつけ終えたら、静は家の表に木の枝で格子状の模様を描き、その格子内に石を綺麗な面と泥の面とを交互に四つ四角に並べた。


「ここからは簡単!

 お互いに綺麗な石の方でやるか、泥の石の方でやるかに分かれるんだ」


そう話す静が泥側を表にした石で、綺麗な側の石を挟むように格子模様の中に置く。


「そしてこうやって、自分の石で相手の石を挟んだら、くるってひっくり返す。

 ひっくり返した石は、自分の石にできるってわけ。

 この『くるくる』の遊び方の決まりは、これだけ!」


この静の石遊びの説明に、雨妹は目を見開く。

 この遊びを、前世でよく知っていたからだ。


 ――つまり、これってリバーシ?


 そう、まさにリバーシ遊びではないか。

 なんと、リバーシを編み出した人物がこの国にいたとは驚きである。

 単純な遊びであるし、どこかで誰かがやっていてもおかしくないのだが、少なくとも雨妹が今世でリバーシ遊びと出会ったのはこれが初めてだ。


「さあやろうよ!

 私は宇としか遊んだことがなくて、他の人とやるのは、そう、楽しい気がする!」


ウキウキしたように語る静の表情は、子どものそれであった。


 ――そうなんだよ、子どもっぽいんじゃなくて、まだ子どもなんだよ静静は。


 雨妹もそのことを改めて思い出す。

 静は大人たちの思惑で、大人の振りをして暮らさざるを得なくなっているけれども、子どもとしての暮らしもさせてやりたい。

 そうとなれば、今やるべきはリバーシ勝負だろう。


「よぅし、こっちだって負けないからね!」


というわけで、雨妹は意気込んでこのリバーシ勝負に挑む。

 前世では子どもがリバーシ遊びを好きだったので、延々と付き合わされたものだ。

 なので、リバーシには自信があった。

 ……のだけれども。


「負けた!」


なんと、初戦であっさりと負けてしまう。

 静がなかなか強かったのだ。


「もう一回、もう一回やろう!」

「いいよ」


負けが悔しくて雨妹が再戦を頼むと、静が頷いて石を並べ直す。

 結果だけを述べると、それから五回戦い、勝敗は雨妹の二勝三敗であった。


 ――戦歴で言えば、私の方が長いはずなのに!


 それなのに負け越してしまうとは、雨妹としてはかなり悔しい。

 一方でご機嫌なのが静である。


「ね? この『くるくる』、なかなか難しいだろう?」


雨妹に勝ち越した静が、得意そうな顔になって聞いてくる。


「うん、難しいや。

 ねえ静静、この遊びって誰に教えてもらったの?」


雨妹が尋ねると、静はきょとんとする。


「誰も教えてくれたりはしないさ、宇が急にやり始めたんだ。

 里の皆が言うには、宇は変わり者なんだってさ。

 変なことをやり始めるのは、宇だって決まっているよ」


静の言葉に、雨妹はなんとも言えない気持ちになる。

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― 新着の感想 ―
[一言] この話が書籍化する時にはリバーシに変わるんだろうな~(トオイメ) それにしても……宇君も転生者なのかな?
[気になる点] リバーシにしなくて大丈夫ですかね?
[一言] あのゲーム、商標使用にうるさいって訊くけど大丈夫ですか?
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