表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第九章 苑州の乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

282/665

278話 夕食は美味しく

立彬リビンに話を聞いてもらえた雨妹ユイメイは、この日の夕食時には心が軽くなった思いだ。

 雨妹は今までだって、別段重く悩んでいたわけではない。

 けれどやはり、心のどこかで気構えていたのだろう。

 その気構えが解けて、「別に難しく考えることはないんだ」と割り切ることができるようになった。


 ――っていうか、内緒事だったら看護師をしていた時にもあったじゃないの。


 患者の個人情報を外で話さないことや、病名を家族もしくは本人に告げるかどうかなど、そうした「秘匿事項」には、己はある意味慣れているではないか。

 少々周りの雰囲気に流されて、真剣に考えすぎていたのかもしれない。

 おかげで今、夕食に「美味しいものを食べるぞ!」という気分で挑めるので、立彬には感謝である。

 心の底から美味しく食べないと、食事に失礼だろう。


美娜メイナさぁん、大盛りで!」


心が軽くなった雨妹は、ついでに食欲も増したので、夕食を多めに注文してしまった。


「はいよ阿妹アメイ、たぁんと食べて疲れをとりなよ!」


美娜からそう言って渡されたのは大盛のご飯と、今日の主菜の水餃、水餃子である。

 茹でたての水餃はお腹から温まるので、寒い時にはより美味しいものである。


「阿妹、なんだか機嫌がよさそうじゃないか」

「そうですか? そうかも」


そして美娜に指摘されるくらいなので、今の雨妹の心の軽さが表情に出ているらしい。


「それで、アンタも大盛りかい?」

「いや、むしろ小盛りで」


次いで美娜から尋ねられたジンが、雨妹の後ろで即答している。

 こうして雨妹たちは食事を持って隅の方の卓へ着くと、向かい合って座った。

 すると静は目の前の料理を観察する体勢である。


「静静、水餃を食べたことある?」

「これ、水餃っていうの? 食べたことない」


雨妹が尋ねるのに、静はふるふると首を横に振った。

 「そうかもしれない」と雨妹としては思っていたが、やはりである。

 もしかして苑州の人は生で食べるか焼くか茹でるかという、良く言えば「素材を楽しむ」調理法しかしていないのではないか? という懸念すら持っていた。


 ともあれ、ここですかさず雨妹は訴える作戦である。


「さぁさ、まずは食べてみてよ。

 温かくて美味しいんだから!」

「そうなんだ」


雨妹の言葉に、静はしばらく水餃子をしげしげと見てから、茹でたてあつあつの水餃を箸でつまむ。

 これをふぅふぅと息を吹きかけて冷ましてから、口へ入れたところ。


「んっ、プルプルしている……っていうか熱い!」


冷まし方が足りなかったのか、後からきたらしい熱さをハフハフして冷ましている静に、雨妹は「ふふっ」と笑う。


「熱々が美味しいんだけど、口の中を火傷しないように気を付けてね」

「それ、先に言って……」


雨妹の忠告に、静がしかめっ面をしているけれど、これは一度経験しないと熱さ具合がわからないだろう。

 続いて雨妹も水餃をフゥフゥとしてから頬張る。

 水餃の中からしみだす餡の汁は、なんとも幸せな味がする。


「うん、美味しい~♪

 まだまだ気候も冷えるから、こういうのがいいよねぇ」

「確かに、寒いと温かい食べ物は嬉しい……美味しい」


静が「美味しい」と言い直したのが、まるで覚えたての言葉を使いたがる子どものようで、なんだかほっこりした気分になる。


「この水餃はね、余ったら明日の朝食で炸餃子っていって、揚げられて出てくるんだよ。

 それだって美味しいんだから!」

「へぇ、同じ食べ物でも違う食べ方があるのか」


雨妹がそう教えてやると、静が目を丸くして驚く。

 餃子はどのようにも変化自在な万能おかずだし、なんなら今度一緒に作ってみるのもいいだろう。

 こうして、雨妹と静が美味しく水餃を食べていると。


「小妹」

「はい?」


ヤンに声をかけられ、雨妹は卓から顔を上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ