表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
228/657

224話 問題だらけ

「それで、わたくしになにをお求めなので?」


婉曲に言っても時間がもったいないと思ったのか、ヤンがズバリと尋ねるのに、リー将軍もズバリと答える。


「こちらの、子どもの身柄を預かってもらいたい。

 本人曰く、ホー家の娘だそうだ」


何家と聞いた楊の眉がピクリと上がるが、言葉をぐっと飲みこむように一呼吸をしてから、李将軍に問う。


「百花宮でないといけないのですか?

 預かるならば外城側の方が、なにかと便がいいのではないですか?」


このもっともな疑問に、李将軍は「そういうわけにはいかない」と告げる。


「外城もそうだが、外廷や内城側にも置くわけにはいかない。

 なにしろ関所を真っ当に通っていない怪しい身の上なもんで、堂々と滞在させるには障りがあるんだ。

 どうやら都入りも、どこぞの荷車に潜んで入り込んだらしいぞ?」


李将軍は雨妹ユイメイがいない間に詳しい話を聞いていたらしく、そんな初耳の情報を話す。


 ――でもまあ、当然そんな都入りの仕方になるよね。


 雨妹が辺境から来た時もそうだったが、都入りの際にはかなり厳しく身の上を改められる。

 皇帝のお膝元なので、怪しい人物を排除するのは自然なことだろう。

 そこを旅人が関所の通行許可証を持たずに通るのは、普通に考えて不可能だろう。

 ちなみに関所なんて通っていない近所の里から来た人間は、里長の一筆を持ってくるのだが、あまりに辺鄙な里だとそんな里が本当にあるのかどうかを確かめることから始めるので、かなり時間がかかることもあるのだ。

 そしてジンは当初そんな身の上で、宿に泊まろうとしていたわけで。

 そんなことをすれば宿から不法に都入りしたと兵士に通報が行き、あっという間に捕まったことだろう。

 それに、これから静の身分は本人の談だけではなく裏付けが必要になるだろうし、それが苑州からの工作を仕掛けられてのことかというのも、もちろん調べられるだろう。

 なにしろ、これから軍を向かわせようとしている場所から人が訪ねてきたのだから、怪しむなという方が無理だろう。

 こうした中で静の存在が明らかになると、皇帝側であれ苑州側であれ、「面倒そうだから殺してしまえ!」的な危ないことを考える人だって、当然出てくるかもしれない。

 李将軍はそれを心配しているのだろう。

 百花宮であれば、出入りできる人間は制限されているのだから、危険はぐっと減るだろう。

 ともあれ、犯罪沙汰での都入りだと説明された楊は、頭痛を堪えるように頭に手を当てる。


「はぁ、なんという大問題でしょうかねぇ」


ぼやく楊に、「なんとか頼むよ」と李将軍が言う。


「もうこの二人のことは上に知らせはやっているし、助けは色々あるだろう。

 新人宮女ということなら、このナリだし年齢も誤魔化していられると思うのだ」


そう語る李将軍の言う「上」とは、もしや皇帝のことだろうか?


 ――そうだよね、皇帝陛下に黙って怪しい人を連れ込むなんて、ちゃんと報告しないと謀反とかを疑われちゃうもんね。


 特に今は微妙な時期なので、報連相は大事だ。

 そう考える雨妹が、再び一人で頷いていると。


「そうだ、嬢ちゃんよ」


李将軍がふいに雨妹に話を振ってきた。


「お前さん、もし太子殿下のお付きと偶然出くわしても、この二人のことを話すなよ?」


何故かそのように釘を刺され、雨妹はきょとんとしてしまう。


「ええっと、話すなと言われれば話しませんが、何故かを伺ってもいいですか?」


この雨妹の疑問に答えたのは、楊であった。


「おや、あの方々もこうした話は小妹シャオメイにはしていないようだね。

 太子殿下の母君は、青州の家の方だろう?

 伊家は苑州の何家と仲が悪いのさ」


「なにしろ、青州は苑州と仲違いした者が興した土地だしな」


楊の説明に、李将軍が付け加えてくる。


「そうなんですか!?」


初めて聞いた太子のお家の話に、雨妹は目を丸くする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ