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223話 巻き込まれた人

「なんだい、許子シュ・ジっていうお人になにかあったのかい?」


この突然の話に、美娜メイナが不安顔で尋ねてくるのに、雨妹ユイメイは「いえいえ」と首を横に振る。


「許さんは居候ですけどヂゥさんと仲良くしていて幸せいっぱいでしたよ。

 これは、そっちとは別の話なんです」


雨妹の説明に、ヤンが「はぁ~」とため息を吐く。


「ってことは、また別のなにかが起きたのかい?

 よくよく問題ごとに行き当たる娘だよ、小妹シャオメイは」


楊から呆れられているようだが、これは別に雨妹がなにかやらかしたわけではなく、あくまで成り行きだ。

 なので雨妹が申し訳なく思うことはないはずである。


 ――いや、もしかしてリー将軍と寄り道して湯円タンユェンを食べたのがいけないのかも?


 確かに、あそこに行かなければ、あの二人組と雨妹が出くわすこともなかっただろう。

 しかしその場合だと、あの二人組が引き起こす騒動がややこしくなってから発覚した可能性もある。

 つまり、今はその想定よりもマシな結果になっているということだ。

 こうして雨妹が一人納得しているところへ、楊が改めて問うてきた。


「で、一体何事なんだい?」


「さぁ、それは私にもわかりかねるといいますか……」


雨妹としても、ここで詳細を語れないので言葉を濁す。

 あの苑州から来たという二人組のことを言いふらすわけにはいかない、ということくらい雨妹にも判断できるし、そもそも李将軍がどういう話の進め方をするつもりなのか、全く知らないのだから、語りようがないという事もある。


「ちょっと、物騒な話じゃあないだろうね?」


美娜が不安そうな顔をするが、苑州絡みであるのは間違いないので、雨妹としても「違いますよ」とはっきり言ってあげられないため、へにょりと眉を下げる。

 その雨妹の様子を見た楊が、再びため息を吐いた。


「わかったよ、将軍を長く待たせるわけにはいかないだろうし、さっさと行くかねぇ」


楊はそう言うとすぐに車を呼んで、雨妹と一緒に李将軍の待つ門へと向かうこととなった。



雨妹も楊と一緒に車に乗ったのだが、車が箱型の軒車ではないので雨妹たちの会話が御者に筒抜けであるため、下手に話ができず無言で過ごす。

 そうやって李将軍の待つ門からだいぶ離れた場所で車を降りて、歩いて進む。

 向かう先についてあまり多くの人に知られてはいけないのだと考えたのか、このあたりの判断はさすが楊である。


「李将軍、お連れしました!」


「おう、入れ」


雨妹が休憩小屋の戸越に声をかけると、中から李将軍の返事があった。

 戸を開けて入ると、李将軍が一人で椅子に座っている。

 ジンとダジャの姿は見えず、奥の棚の向こうにでも身を隠しているのかもしれない


「お呼びと伺い参りました」


「楊、わざわざ来てもらってすまねぇな」


楊が礼の姿勢をとるのに、李将軍が軽く手を振って止めさせる。


「出てこい」


そして奥に声をかけると、やはり隠れていた静とダジャが姿を現した。

 ここまで来る際に身を隠すために羽織っていた上着は、もう着ていない。


「……なるほど」


二人をじっくりと見た楊が、ポツリと呟く。


「そちらのお方は東風の顔立ちで、そちらは異国人でございますね。

 お話は、この二人についてでしょうか?」


「さすが、話が早いな」


問いに李将軍はニヤリとして、頷きを返した。


「察したと思うが、まずこっちは苑州の人間だ。

 ちなみにまだ十の小娘とも言えない子どもだぞ?」


「まあ、女の子ですか……!」


李将軍が静を指して言うと、楊が目を見開く。

 彼女でもやはり、ぱっと見で静のことを細身で小柄な男だと思ったらしい。


「もう一人の異国人は、奴隷だとさ」


「……なんとまあ」


そしてダジャを紹介され、楊は疑わしそうな顔を隠さない。


 ――だよね、奴隷っぽい雰囲気がないよね。


 この反応に「うんうん」と頷く雨妹を、楊がジトリと見てくる。

 「面倒ごとに巻き込んだな」と言いたそうだが、楊を指名したのは李将軍であって、雨妹が積極的に巻き込んだわけではないので、そんな目で見ないでほしい。

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