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216話 二人の目的

「あの、えっと、その」


だが静は直ぐに言葉が出ないようで、声を詰まらせている。


 ――都に目的があるのは、静さんの方なのかな?


 しかしいざとなったらどう言えばいいのかわからなくなっているようだ。

 だが、子どもだったらそんなものだろう。

 知らない大人の前で堂々と意見を言える子どもなんて、そうそういるものではない。

 明らかに困っている静が助けを求めるようにダジャを見るものの、ダジャはツンとした態度で言う。


「お前のこと、お前が話す」


つまり助ける気はないらしいダジャに、静がぐっと息を呑む。

 それにしても不思議な二人だと、雨妹は見ていて思う。


 ――この二人、どういう関係なんだろうね?


 年齢を考えると普通ならば、ダジャが保護者で静が被保護者だろう。

 しかしそう割り切るにはどこかしっくりとこないし、静の方に行動の決定権があるように思えるのだ。

 今も、ダジャが静に行動させようとしているように。

 雨妹が二人について考えを巡らせていると、その間に静は心を落ち着けたらしく、「すぅ~、はぁ~」と呼吸を整えてから口を開く。


「私は皇帝に、皇帝陛下に会いたいんだ!」


叫ぶようにして言い切った静に、雨妹と李将軍はきょとんとした顔をしてしまう。


 ――いきなりすごい名前を出してきたよ!?


 後宮の中では姿をチラ見して幸運を授かりたいという意味で「皇帝陛下に会いたい」などと言われることはあるものの、静の言っている内容だと、おそらくそういう事ではないのだろう。

 驚いている雨妹の一方で。


「皇帝陛下とは、またどえらいお方を訪ねてきたもんだ。

 そりゃあ、なにか伝手でもあってのことなのか?」


李将軍はさすが経験豊富らしく、慌てることなく話の先を促している。


「そんなものはないね!

 ねぇ、どうすれば会える?

 毎日宮城の前に座っていればいい?

 それとも、すっごいお金がいるっ⁉」


いったん切り出せば、怒涛の勢いでまくしたてる静に、李将軍は「そうだなぁ」と思案する。


「なんの伝手もない場合だと、まず役所に皇帝陛下にお会いしたい旨を告げて順番を貰うことだな。

 陛下とお会いしたい者は大勢いるので、順番が巡ってくるには数年、下手すると数十年待つ覚悟が必要だな」


そう説明する李将軍曰く、役所で緊急の用件かどうかを一応精査されるため、役所が「どうでもいい理由の面会案件」だと判断すると、後回しを繰り返されてなかなか順番が回ってこないのだという。


 ――というか、一般庶民でも皇帝陛下に会う機会はあるのかぁ。


 それだと、順番が巡ってくる可能性は低くても、一生の自慢を作ろうと考える人がけっこういそうではある、などと雨妹が思っていると。


「そんな!? こっちは悠長に待っていられないよ!」


静が悲鳴のような声で文句を言う。

 一方でダジャは、静の反応でどういう話だったのか察したようで、納得顔で頷いている。

 ダジャはこの流れを予想していたようだ。


「ねえ、なんとかならない!? やっぱりお金っ⁉」


「こらこら、宮城が賄賂で回っているような言い方はよせ」


静の言葉に、さすがに外聞が悪いので李将軍が注意する。


「言ったろう、優先度が高いと判断される、つまりすごく困って急いでいるとお役人が思ってくれたならば、先に会わせてもらえるんだよ。

 要するに、お前さんが何故皇帝陛下にお会いしたいのか、その理由が大事なんだ」


李将軍がまだ子どもらしい静と、なによりダジャを意識したのだろう、分かりやすい言い方をしている。

 これに静はがぜん食いついた。


「すごく困っているよ、私は!

 だから助けてもらおうと思って、はるばるここまで山を越えて来たんじゃないか!

 前に、皇帝陛下が私たちを助けてくれたって、老師が言ってた!

 だから、今度も頼めば助けてもらえるんじゃないかって!」


またまた静が気になる発言をした。


 ――陛下が、助けてくれた?


ということは静は、皇帝の関係者なのだろうか?

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