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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第七章 冬の事件

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190話 リハビリしよう

そして雨妹ユイメイはさらに続ける。


シュさんの様子だと、ここに来てずっと部屋に閉じこもっていませんか?」


「そりゃあ、あんまり好き勝手できるものじゃあなし、自然とねぇ」


雨妹の問いに、徐が眉を寄せつつもそう話す。

 これに、雨妹は「やはり」と頷く。


「それだと体力も衰えるし、気持ちも塞いでしまいますから、これから一緒に散歩をしましょう!」


徐を散歩に誘う雨妹に「そりゃいい」と賛成するチェンだが、「えっ!?」と外から案内役の彼が驚く声が聞こえてきた。


 ――あれ、駄目なのかな?


 それを聞いて首を傾げる雨妹に、ここまで黙って徐の診察を見守っていた立彬リビンが口を挟む。


「外出は、さすがにあの新人殿では許可の判断がつかないのではないか?」


立彬がそう指摘したのに、廊下から部屋を覗いた彼が「そうですっ!」と告げる。


「じゃあ、許可を貰いに行きたいので、どこへ行けばいいですかね?」


雨妹が廊下に向かって顔を出して尋ねるのに、彼はますます迷った様子になる。


「えっと、あっと、あ! ちょっと待ってください!」


しかしなにかに気付いた彼が小走りにどこかへ行ったかと思ったら、どうやらたまたま先輩官吏が通りかかってくれたようで、話し声が聞こえてくる。


「あの、そこの中庭であればいいそうです!」


そしてまた小走りに戻ってそう報告してくる。

 遠距離走をしたいわけではないので、ちょっと身体を動かすには十分だろう。

 というわけで、徐を散歩させるべく皆で中庭に出ることとなった。


雨妹たちが五人でゾロゾロ中庭に出ると、そこかしこで地面に座って休憩している官吏たちの姿があった。

 彼らが本当に休憩しているのか、はたまた徐の周囲を見張るためにそこにいるのかは分からないものの、雨妹がわざわざ彼らのことを気にすることもないだろう。

 徐は外に出てまず深呼吸をした。


「はぁ、外の空気っていいもんだったんだねぇ」


徐がそんな風に零す。

 徐は元々夜が主な仕事時間で、演奏だって屋内がほとんどだっただろうから、屋内にずっといることに不足を感じなかったのだろう。

 しかし自分ではなにも問題ないと思っていても、無意識のうちに身体に負担がかかっているということもあったようだ。

今の表情も、屋内にいた時と比べて柔らかだった。


「このお日様の日差しを浴びることも、健康には大事なんですよ!」


雨妹は徐にそう話しかける。


「そうなのかい?

 日焼けをしないために外に出ないものだっていうのが、宮妓ではよく聞いた話だがねぇ」


これを聞いた徐が、そう言って首を捻る。


「日焼けの問題だけをあげれば、それが最適な行動なんでしょうけど。

 日光は体内時間を整えてくれますし、体内の様々な不足を補ってくれます」


「ま、日を浴びないヤツは軟弱に育つな」


雨妹の説明に、陳もそう言葉を付け足す。


「へぇ、そんなものなんだねぇ。

 けど確かにこうしているのは気分がいい」


雨妹と陳の話に、徐はそう告げて目を細める。


 ――うんうん、日光浴っていいよね!


 ここでビタミンがどうのと説明しても理解されないだろうから詳しくは言わないが、外に積極的に出た方がいいと思ってもらえたらいいのである。

 このようにゆったりくつろいでいた雨妹たちだったが。


「なんだ?」


一人くつろぐことなく周囲を警戒していた立彬がそう声を上げた。


 ――うん?


 雨妹がどうかしたのかと立彬の方を見ると、彼は中庭を覗く建物の窓の一つを見ていた。

 その窓の向こうに見えるのは廊下だ。

 この建物は廊下も外に開放された造りではなく屋内になっており、犯罪者の脱走防止のためなのかもしれない。

 雨妹は立彬がなにを気にしているのかすぐにはわからなかったが、しばらくするとその窓の向こうが騒がしくなってきた。

 騒ぎ自体は遠くで起こっているようだが、その声がこちらにまで響いているのだ。


「廊下でなにかあったんですかね?」


監視役の彼が不安そうな表情をしていると、誰かが遠くから制止を振り切ってこちらへ駆けてくる姿が見えた。


 ガンッ!


 そして衝突音がして、窓の装飾を壊さんばかりに両手で掴んでいるのは女であった。

 よく見れば、あの捕まった宮妓ではないか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 窓に! 窓に!! って叫ぶとこですか?
[一言] あれ?ホラーだっけこの作品(真顔)
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