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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第七章 冬の事件

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148話 臭くて申し訳ない

 そんな立彬リビンが、雨妹ユイメイをマジマジと見て渋い顔をする。


「む、お前少々臭うぞ?」


立彬がそう言って袖で鼻を覆う。


 ――それを乙女に面と向かって言うのはどうなの?


 いや、事実今の雨妹は臭いのだけれども。


「私も好きで臭わせているわけじゃあないですから!

 私の手に余る事件に遭遇してしまって、誰かを巻き込みたくて来ました!」


雨妹は文句を言いつつ、ここへ来た事情を話すと、立彬からジトリとした目を向けられた。


「雨妹、もう少し建前を取り繕え」


立彬からそう指摘される。


 ――あ、しまった!


 雨妹もかなり混乱していたのだろうか、うっかり本音の方が口から出てしまったようだ。


「言い直します、相談を聞いてほしくて来ました!」


やり直すようにそう言う雨妹は、「もう遅い」と立彬から額を指で弾かれた。

 結構痛かったので、雨妹は額を押さえて恨めし気に立彬を見上げる。


「今の、絶対に赤くなってます!」


「おかげでボケた頭が冴えただろうが」


涙目で噛みつく雨妹に、立彬はしれっとそう述べた。


「けれど、お前がそれほど慌てるなんぞ珍しいことだ。

 どんな時でものほほんとしているというのに」


だが続けてそう話して眉を上げる立彬に、雨妹はムッとする。


「その言い方、まるで普段の私がただのお間抜けさんに聞こえるのでやめてください」


「饅頭を持っているお前は、だいたいそうだろうが」


雨妹の文句に、またもやさらっと返される。


 ――そうかもしれない。


 そして納得してしまったのだった。

 ともあれ、そんなわけで雨妹は相談するにもここでは目立つということで、太子宮にお邪魔をすることになった。

 表からの出入りをさせるにはあまりに臭いということで、裏口から入った。



「確かに臭いね」


雨妹が太子のもとへ案内されての、卓について優雅にお茶を飲んでいる太子からの第一声がこれだった。


 ――早くこの阿片を捨てちゃいたい!


 雨妹にこの臭いが染みついてしまったら、どうしてくれるのか。

 というかそもそも、雨妹は立彬に相談したかったのであって、太子にまで話をするつもりはなかった。

 そちらには立彬からいい感じに情報を流してもらおうと思ったのだ。

 しかし太子から「面倒だから直接話しにおいで」と言われてしまい、今ここにいるというわけである。

 太子と立彬、秀玲シォウリンが揃った室内で、雨妹はまず窓を開けてもらった。

 そろそろ涼しくなってきているので、窓が閉められていて換気が悪かったのだ。


「臭くて申し訳ないですが、この臭さの原因について相談したかったので、お持ちしました」


雨妹はそう説明すると、帯に挟んでいた阿片の燃えかすを包んだ包みを取り出す。


「先に注意しておきますが、あまり間近で臭いを嗅ぎ過ぎないでください。

 具合が悪くなりますので」


雨妹がそう言って包みを開けると、鼻を刺激するアンモニア臭がより強くなった。


「本当に、具合が悪くなる臭いね」


眉をひそめた秀玲が臭いを余所に流そうと、持っている扇子でパタパタと仰ぎ出す。


「もう仕舞いますね、私もあまり嗅ぎたくない臭いなので」


全員に現物を見せたところで、雨妹は包みを閉じて帯に挟もうとしたところを、立彬に「これに入れろ」と言われて箱を渡された。

 雨妹が言われた通りに箱に包みを入れると、その箱は窓の外に出される。

 臭いがそこにあるという気配はあるものの、雨妹は間近の臭さから解放されたので爽快だ。

 立彬の気遣いに感謝である。


「鼻が曲がるとは、こういう臭いを言うのですわね」


そう告げる秀玲はお茶の香りで鼻の中を洗おうと、お茶を淹れ直して全員に配った。


 ――はぁ~、お茶が美味しい。


 お茶の香りを念入りに嗅いでから飲むと、雨妹はようやくホッとする。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読ませていただいてます。 雨妹と立彬のからみが特に好きで、今回も楽しかったです。これからどのような展開かドキドキしますが、からみがあったらうれしいです。
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