表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第七章 冬の事件

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

151/680

147話 相談しましょう、そうしましょう

「なんだ、あなたですか。

 驚かせないでくださいよ、もう!」


雨妹ユイメイはホッとした顔で笑顔を向けた。

 一方で、シュの方は雨妹に怪訝そうな視線を寄越してくる。


「お前さん、あの宮女じゃないか。

 こんなところでなにをしているんだい?

 ここはお前さんが来るような場所じゃあないよ」


徐からそう言われ、どうやら雨妹が勝手にうろついていると思われたようだ。


「掃除をしていました、私は掃除係ですから」


雨妹がそう告げると、徐は目を瞬かせた。


「……そう言えば、お前さんと会ったあそこはごみ焼き場だったかね」


徐はどうやら初対面の際に雨妹はごみを持ってきて焼いていた姿を見たのに、掃除と結びついていなかったようだ。


 ――この人って元々は、いい家のお嬢様だったのかも。


 掃除をしたことがない人は、掃除の仕事がどういうものかわからないのだろう。

 ごみを焼きに来る人を見ても、それが掃除の一環だと思わないものかもしれない。

 そもそも裕福な家庭でないと、楽器を弾くなんていう経験はできないはずだ。

 楽器を持っている人となると、楽器を嗜む芸者の家系か、金持ちの家の嗜みくらいだろう。

 そうした金持ちの家の娘が家が破産して妓女になる際、その素養のおかげで楽師の妓女になれるというわけだ。

 そしてそんな素養を持たない貧しい家の娘は、自らの身体を商品にするしかないのだろう。

 雨妹が前世ではあまり深く考えなかった妓女という人たちに対して、そんな推測をしていると。


「このあたりは、やっかいな連中がうろつく場所なんだ。

 そいつらに目をつけられると厄介だから、アンタはサッサとどこかへ行きな」


徐がちょっと表情を引き締めてから述べて、ヒラヒラと手を振るのに、今度は雨妹が目を瞬かせる。


「もしかしてそれを教えようとして、わざわざ声をかけてくださったんですか?」


声をかけた時点では雨妹だと気付いておらず、見ず知らずの宮女だっただろうに。

 相手が宮妓ということで嫌な対応をされるかもしれない相手に、忠告のために話しかけるとは。


 ――この人も、けっこうお節介なのかも。


 その親切心が嬉しくて、ニコニコ顔になる雨妹に対して、徐はしかめっ面をする。


「……ただ面倒事が嫌いなだけさ、早く行きな」


再び強めに手を振られたので、雨妹は素直にこの場を立ち去ることにした。


「では、またお会いしましょう!」


「会うことなんざ、もうないよ」


雨妹がそう挨拶をするのに、徐はふいっと顔を背けて言う。

 すれ違う時、徐の帯に煙管が刺さっているのが見えたが、今日の彼女から煙草の臭いはしなかった。



こうして教坊から移動した雨妹は、太子宮の近くまで来たのだが。


「う~む、どうしよう」


ここからどうするべきか、迷っていた。

 なにしろ自ら太子宮を訪ねたことがないので、ここで誰かを呼び出したりする手段を知らないのだ。


 ――立彬様に繋ぎがつけられるかなぁ?


 雨妹は太子宮を塀の外から精一杯背伸びをして覗き込みつつ、上手い具合に誰か知っている人が通らないかと思っていると。


「なにをしているか、お前は」


背後から声をかけられ、それが知った声であったので雨妹はギュン! と振り返った。


「やった、本人が来た!」


「なんだそれは?」


喜ぶ雨妹を声の主――立彬リビンが不審そうに眺める。

 雨妹は声をかけられるなら、遠くから怪しそうにこちらを眺めている門番の宦官だろうと思っていたが、まさか目的の人物があちらから来るなんて、嬉しい予想外だ。


「明賢様が『あそこでピョコピョコしているのは雨妹ではないか?』と仰られたから、様子を見に来たのだろうが」


立彬がジロッと睨みながら、自身がここにいる理由を話す。

 なんと、雨妹は太子によって発見されていたようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 明賢お兄ちゃん、妹好きですよね。 薄幸だった雨妹のお母さんに ちゃんと娘さんは家族のもとに辿り着いてますよ、と伝えて差し上げたい。
[一言] なる程。まさか、そんなところまで収斂するとはねぇ となると仕掛けてきたのも…? そして、それはそれとして詳細はともかく動きそのものは徐さんが知っていると……色々と繋がり始めたのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ