25.アキトの気苦労1。Side アキト
俺はアキトです。先日、12歳になり、ディアレスト学園中等部に入学が決まり、もうそろそろ学園に入学する。
ディアレスト学園は12歳から通う事になっており、12~15歳は中等部。15~18歳は高等部に通う事になっており、国民の多くが一度は通う。しかし、小さな田舎の町では通えない事が多い。つまり、ここで貧富の差が出てくるのだ。学園には、魔法騎士隊科、普通科、貴族科、魔術師科の4つの学科があり、俺は日々鍛練を怠らないように、魔法騎士隊科に入るが、本来は将来魔法騎士隊に所属したいと思っている人が所属する学科である。普通科は属性魔法が使えない平民が通う学科、貴族科は属性魔法が使えない貴族が通う学科、魔術師科は将来魔術師になりたい学生が通う学科である。
俺は学園に通える事に喜びを感じながら、日々、魔法騎士隊の鍛錬に参加している。
・・・のだが、毎日のようにゼノンが俺に勝負を挑んでくる。正直に言って鬱陶しい!それに、仕事が立て込んでいる。“蠱毒”による魔物の襲撃事件が何故か横行しているのだ。それを知らない国民の多くは『これは、10年前に誘拐されて、亡くなった“ハルディーン第五王子”の怨念だ!』という声を上げるが、“ハルディーン第五王子”は実は生きている。というか、ゼノンに毎日のように勝負を挑まれているのはその“ハルディーン第五王子”の仕業なのである。
“ハルディーン第五王子”こと本人はヒロトと名乗っている。平民を装い、王族の印を隠して生きている。本人曰く、誘拐した連中を刺激したくないと言っているが、お前ならどうにか出来そうな気がするが。なんせ、次の国王候補だからな。何故なら、国王になるには左手に『王族紋章継承魔法』の印を持つ者が優先されるからである。次に、属性魔法を使用する者。“ハルディーン第五王子”はその印を持っており、その効果も身を以て、実感させられた。類い稀なる光魔法を贈与された。おかげで、“選ばれし者”と言われる事になるのだが、それは“メイディス第四王子”も同じである。
“メイディス第四王子”は2カ月前に10歳になられた。“ハルディーン第五王子”とは、双子の兄弟である。“メイディス第四王子”は盛大に誕生日を祝われたが、ヒロトは公にしていないので、正体を知っている俺と“メイディス第四王子”がこっそりと祝った。なのだが、後で国王陛下に呼ばれ、特別にプレゼントを頂いたのだとか。ヒロトは口にしていないらしいので、国王陛下も流石、『王族紋章継承魔法』の使い手だなぁと思ってしまった。
あぁ、ゼノンというのはとある辺境伯の息子で、貴族意識の高い同じ魔法騎士隊第三部隊に所属している奴。ヒロトをライバル視していて、ヒロトは『俺に勝ったら、決闘を受けてやる。』と上から目線な言葉の言ったので、被害が俺に向かっている。俺だって、ヒロトに勝ちたいさ。でも、ヒロトは涼しい顔して、最強クラスの魔物を一刀両断するような奴。そんな簡単には勝てない。だからこそ、日々の鍛錬に力が入る。いつかは勝ってやる!
しかし、ゼノンにも後輩が出来て、ちょっとはマシになるかと思ったんだが、魔法騎士隊の二大暴れ狼“ワーウルフ”と“黒狼”にしか、興味がない様子。ちなみに、“ワーウルフ”はヒロトの異名。しかし、二人には相手にもされない様子。
△△△△
「今日こそ、お前に勝ってやる!そして、“ワーウルフ”に勝負を挑んでくるんだ!そんで、俺は最強になるんだ!」
「っち!また、お前か。俺にも勝てない癖に、ヒロトに勝てるかよ。」
「るせぇ!今日は絶対に勝つ!!」
・・・いつも、この調子である。しかし、ヒロトを意識してか、炎魔法を習得するというなんとも言えない力技する奴。わざとじゃねーの?やたら、炎魔法を使うようになってんもんな、あいつ。
同期(年上)に言われて、隊長の元に向かう。ゼノンもだ。隊長の元には、ヒロトの姿もあった。
「隊長!何故俺達が招集されたんですか?」
隊長は顔をしかめながら、重々しい雰囲気を漂わせながら、口を開く。
「・・・今回は少数精鋭で、第一部隊と仕事をする事を余儀なくされた。うちからは、アキト、ヒロト、ゼノンを仕事に行かせようと思っている。・・・向こうは、“黒狼”にメイディス第四王子に、ライトを招集したみたいだ。・・・行ってくれるか?」
「「はい!!」」
「“ワーウルフ”に“黒狼”。面白い仕事になりそうだ。」
・・・ゼノンは二人に注目してんじゃねーよ!他にも、メンバーいるだろーが!!
これが、波乱の始まりだとは思いもしなかった。