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歩み
夜が明けた。
浅草寺の鐘が遊郭に響くいつもと変わらない朝だ。
女は男にひっそりと寄り添い、大門まで歩いた。
遊女たちは客と夜を共にした後、朝遊郭の大門まで見送るという習慣があり、二人はその習慣を利用して逃げようと作戦を立てていた。
早まる鼓動を隠すかのように、ゆっくりとゆっくりと、二人は大門へ歩んでいった。
大門の下まで来た時、二人は見つめ合い手を握り合った。
「一、二の三で行きましょう、いいですか?」
「ええ、わかりました。一、二の三ですね」
「三になったら身体のすべての力を使って走りましょう、僕が捕まりそうになっても気にせずに逃げてください」
「いいえ、決して見捨てたりなんかしません。死ぬ時は一緒です。」
にこりと笑う女を見て、男も静かに笑った。
二人はゆっくりと深呼吸をして数えた。
「「一、二の…………三!!!!!」」