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利害一致
女は言葉の意味が理解できず、え?と男の顔を見たが、真剣な男の表情からようやく理解した。
哀しい顔で女は言った。
「いけませんよ、だってこの日本国でそこそこの権力をお持ちの方々に気に入られてますもの。逃げたりしたら私はもちろん、貴方まで罪に問われて殺されるかもしれません。巻き込むわけにはいきませんよ」
だが男は喰い下がらなかった。
「実は僕、明日死のうと思っていたんですよ。今日は最後の気晴らしのつもりで貴女を呼びました。だから僕、もういつ死んでも構わない。どうせ死ぬなら人のために死にたいのです。だからお願いです、僕にかけてみてください。」
頭に浮かぶ言葉を一生懸命繋げて口から吐き出した。
女は目をまん丸く見開いて、そして伏せた。
「ずっと逃げたかった。でも、いつのまにか考えることを放棄して自分を甘やかしていたの。」
女は男の手を強く握りしめた。
「私の手を離さないで。」