1/5
出会い
ーあの日、貴方と手を取り合って無我夢中で走ったこと、私は永久に忘れませんー
ある男は毎日毎日死ぬことばかり考えていた。
毎日毎日、毎日毎日、死んだように生きていた。
だが彼は歳のわりに金だけは有り余るほど持っており、ついに死ぬ日を決めたある日盛大に金を使ってしまおうと計画した。
盛大、といっても彼の財産を全て使い果たすなんてことは到底無理であったが。
死のうと決めた前夜、彼は夜の街に足を運んだ。
死ぬ前に?と誰かに幻滅されそうだが、これは彼がふと死ぬ前に美しい女でも抱いてみたいもんだ、と思ったためであり、また吉原なら「盛大」に散財できるとも考えたからである。
彼は明日死ぬという気持ちを忘れることはなかったが、人生最初で最後の吉原に若干鼓動をはやくしていた。茶屋で豪勢に散財し、一番高い女を茶屋に取り次いでもらい、部屋で待っていた。
数分して入ってきた女は目を疑うほど美しく艶やかだった。