<エピローグ>
<エピローグ>
「ちょっと、なによっ!」
「えっ?」
「私を勝手に彼女みたいに呼ばないでよね」
「おまえが、放課後、付き合えって言ったんだろ」
「誰がそんな事を言ってたのよ、あのさ、幼なじみだからって、馴れ馴れしくしないでよね」
「それは、おまえの方だろ、俺の事をダーリン、ダーリンってよ」
「おぇっ、そんな事を私が言う訳ないでしょ、それは、昔の話しでしょ、今はそんな風に呼ばないから」
「だったら、絶対に呼ぶなよな」
「私がいつ、そんな気持ち悪い呼び方した?そんな呼び方をするの、あんたが付き合ってる、ちんちくりんのデブのブスじゃないの」
「おまえ、エミリーの事をデブとかブスって言うじゃねーよ、おまえなんて、板っぺらだろう」
「キィーッ、言ったわね」
よく考えてみたら彩矢とは昔からこんな感じで喧嘩ばかりしていたような気がしてきた、彼女が言っていた異変がこの事ならば俺は後悔するどころか感謝したい気持ちだった、放課後、校門の先で待っていた彼女と落ち合いハンバーガーショップで二人の現実での時間を過ごした。
「彩矢さん、何か言ってた?」
今まで大口を開けてバーガーを頬張っていた彼女が急に不安げな顔をした。
「いや、別に、そもそも、あいつと放課後にした約束が反故になっていたし、時空様々だよ」
「それ、本当なの」
「ああ、それによ、いつも、馴れ馴れしく付きまとってたのが、急に、冷たくなって、ちょっと、ビックリしたけど、よく考えたら、小中は別の学校だったし、高校もあいつの気まぐれで決めたんだろうから、これが本来の流れなんだろ」
「そうなんだ・・・やっぱり、私のせいで色々と異変が起こっているんだ」
「ありがたい異変だよ」
「でも、異変は彩矢さんとの事だけじゃないかも・・・」
「あとはなんだ」
「分かんないよ、でも、私の存在が時空に異変を与えるんだよ」
「そんな事は気にするなよ、俺はエミリーが居るだけで十分だ」
俺は残っていた飲み物を一気に飲み干した。
「そうだよね、心配しても、どうにもならないし」
「また、ラス何とかの卵が現れたなんて話しじゃないだろ」
「どうなんだろう、私は現実空間の人間になったから、もう、パワーも出ないし、時空の移動も出来ない、でも、他の場所でラスプーチンの卵を探している子がいる可能性はあるよね」
「なるほどな、でも、それは、俺たちに関係ないだろ」
「関係ないと言い切れないよ、だって、誰かが時空を変えたら、私達にも影響が出来る可能性だってあるでしょ」
「影響ってなんだ」
「だから、急に彩矢さんが素っ気なくなったみたいに、私達だって、急にお互いを嫌いになったりとか」
「そんな事はあり得ないだろ」
「そう思いたいけど」
ガキの頃、彩矢を嫁にすると言った時、俺は確かに彩矢が好きで、一生その気持ちは変わらないと思った、今、俺は彼女を一番大切に思い、そして、その気持ちは永遠だと思っているが、彼女が言う通りその気持ちが急に変わってしまう事がないとは言い切れないのかもしれない。
「なぁ、ラスプーチンの卵って言うのは、それぞれの心の中にあるじゃないのか」
「そうかもね」
間もなく、旧校舎の解体工事が始まり重機が埃を立てながら旧校舎を取り壊していく様子を教室の窓から眺めながら彼女の言葉を思い浮かべた。