第50話:慣れた我が家
「ただいま」
ボク達は家の前で別れて、それぞれの家の玄関を開けた。
……玄関の向こうには、見慣れた顔と姿があって、ボクはそこでようやくホントに元の世界に帰ってきたんだと改めて実感できた気がした。
「あぁ、おかえり深咲」
「ん、ただいま爺ちゃん」
玄関先でボクと爺ちゃんがそう挨拶を交わしてると居間の方から婆ちゃんが顔を出して
「あらおかえりなさい、深咲ちゃん。もうすぐご飯が出来るから手洗いうがいして着替えてらっしゃい」
「うん。婆ちゃんもただいま」
ホントにたったそれだけの会話だったけど
こんないつも通りが当たり前のようにできるということだけでボクはますます本来の世界に居るんだと言うことを理解出来てきた
それから、婆ちゃんが作ってくれたご飯を食べて、爺ちゃんの晩酌に付き合って
そんな中、ボクは爺ちゃんから聞くことになったのだった……
――捕まっているはずの両親を殺したあのお母さんの兄が檻の中で死んでいたと……――
「あいつが?」
「あぁ、警察の方からの説明ではその死にざまは何か恐ろしいモノを見た様な表情だったとか」
「そっか……」
爺ちゃんからそんな話を聞いて思ったのは、あの時現れた幻覚、そしてそれを消したソウディルさんの力
きっと、そういうことなんだろう……
「さ、深咲。今日は疲れただろう?早めに寝るんだよ」
「そうだねー……って、え……?」
確かに向こうに飛んでる間は疲れもあったけど……なんで爺ちゃんが知ってるの?
いつもとは違うセリフが出てきたことにボクが戸惑っていると爺ちゃんはボクの表情にすぐ気付いたのか
軽く笑みを浮かべて、ポンポンと、軽くボクの頭を撫でながらそう言った
「時空間の移動というのはどうしても時間のずれが出るらしいからのう」
「……え……?」
その言葉は、どこかそれを体験したことがあるような……
でもボクはその言葉の意味を聞くことができなかった
ただ後日、ボクは爺ちゃんのあの言葉の意味を婆ちゃんから聞くことになるとは思わなかった
「お爺さんの言っていた時空間の移動のことかい?なんでも、あの人の知り合いがそう言ってたそうよ」
婆ちゃんが言うには、その爺ちゃんの知り合いは、爺ちゃんが幼い頃に行方不明になって、爺ちゃんが若い時に突然帰って来たらしい。
でも、その知り合いの人は帰ってきて数日後には亡くなっていて、まるで死に間際に帰ってきたようだと爺ちゃんのいたところでは少しの間だけ噂になってたらしい
その間に爺ちゃんはその人から話を聞いてたらしい。
その知り合いの人がどこにいたのか、何があったのかということを……
「見たことのない世界にいたそうよ。その人は」
見たことのない姿の人がいたり、見たことのない生き物がいたり、見たことのない格好をしてる人だったりがいたらしい
……まさかねぇ……
「お爺さんはその人が嘘をつく人だと思ってなくてね、だからきっとそんな世界もあるんだろうと思ってるのよ」
ボクも、そんな世界に行ってたって言ったら……婆ちゃんも爺ちゃんも驚くのかなぁ……?




