第38話:ゴールは間近
――今日もまたいつものが出たらしい。
ただ、その噂はもう城下の人達にしてみればまたかという意識しかなくて。
「影の一人歩き、と言ったところでしょうね」
そう言ったのはソウディルさんだった。
「ていうかなんでまたソウディルさんがいるの?」
「……あなたは、わかっているでしょ?」
そう言われて否とは言えないけどね……
「そもそもさ、ソウディルさんは“勇者の役割”ってなんだと思う?」
「“勇者の役割”ですか?……旦那様を倒すこと、ではないのですね」
「うん、元々ボクと白夜はおまけだったからこの世界でのボク達の存在意義って無に等しいけどさ」
――なら、悪い噂があるやつをこの城下から消え失せれば他の悪いやつらは大人しくなると思わない?――
ボクはそう、ソウディルさんに言った。
だからじゃないけどボクは彼らと遊んでたんだ
「家が困って泥棒した、とかの人にはさすがに何もしてないけどね?」
「えぇ、もちろん存じていますわ」
「やっぱり見てたか……ただね、ボクまだ遊び足りなくて困ってるんだぁ」
「もう悪い噂のある方はいらっしゃらないの?」
そう、そこが問題なんだ。
いるにはいるけどさすがに隠れるのがうまくてボクも見つけれないし
あまり表だって動きまわったらばれちゃうし
「役割が終わったら、帰れたらいいのになぁ……」
ボク達がここに来てからむこうはどのくらい時間が経ってて、爺ちゃんと婆ちゃんはどうしてるのか
わからないからこそ気になるし、心配で……
ていうか結局帰れるかどうかも明言されなかったもんなぁ……
「キラキラ王子も王様も悪い人ではなさそうなんだけどね」
「ミサキ様、送還に関しては私に任せてもらえませんか?」
「え、ソウディルさんに?」
えぇ、と頷いたソウディルさんはいつもと変わらない笑みを浮かべてたけど……
「そう言うならお任せするけど……ボク達、ホントに帰れるの?」
「帰れますわ。絶対に」
そういえばソウディルさんの力ってどの程度のものなのか結局知らなかったっけ。
断言した彼女の言葉にボクは嘘も感じられなかったし、あの老害達のせいで見せられていたあの男の幻影を消したときのことを思い出してボクはなんとなく信用できる気がした
とはいえ、ソウディルさんの言葉に含みがあることぐらいボクだってわかってるからね。
ソウディルさんは、どうしてくれるんだろうな……ボク達を
***
夜が更けて、影はひとり当てもなくさまよう
早く悪いやつをやっつけなければと……
そして、影はさいごのやつらを見つけて口角をあげる
『みつけた……』
影に見つかったら最後、彼女の遊びは逃げられなくなるまで終わらない……
帰るまでが召喚思想でこのお話はお送りしてます。




