第37話:それは彼女にとってただの遊びなだけ
――また、人だったはずのものが路地裏から見つかったらしい……そう、話題が湧いて出てきたのは今朝がたのことだった。
「でも、誰もそれをやった犯人を探そうとはしていないようだな」
そう言ったのは王様で、城下によく降りる騎士の人達も犯人探しをするつもりはないらしい。
そして珍しいと思ったから聞いてみれば答えはだいたい同じで
「そもそもやられてるのが全員よくない噂しかないやつらだったからな……それにこちらから手を出しにくいのばかりで言ってしまえば騎士としては失格なのだろうけど手間が省けてよかったというか……な」
ちなみに、そう答えたのは白夜と仲がよくなった騎士の人だった。
ついでにタスクさんもほとんど似たようなことを言ってたけど
「そういえば前にミサキ様が懲らしめていた4人組を覚えてますか?」
「えーっと……あぁ、ご飯のとこに来た」
「そうです、彼らのうちの女性とその女性にナイフを向けていた男性の2人が助けを求めに来たんですよね……自分達も殺されてしまうと」
「ん?2人だけ?」
「えぇ、ただ……彼らは保護ではなく捕縛になりましたけど」
残り2人はすでに物言わぬ状態で発見されて、それに怯えて騎士に助けを求めた結果捕まってことらしいけど……
それだけいろいろやってたのかあの人達……
「あ、タスクさんタスクさん。またあのお店でご飯食べたいです」
「えぇいいですよ。いつ行きますか?」
「タスクさんが余裕ある時にでも!」
ただ、タスクさん曰くしばらくは城下を警戒しなきゃいけないから暇な時がないらしいから事が鎮まるまではしばらく無理らしいけど。
早くタスクさんに暇な時が来たらいいなと思いながらボクはタスクさんとその場で別れた。
……それにしても、あの2人……そんなとこに居たのかぁ……
***
「い、いや……ゆるして……っ」
カツンカツン、と石畳に響くその足音に女は身を震わせる
よくない噂を持つ者が物言えぬ状態にされてるという噂を耳にした日から彼女は自分もそうなるのではと怯えていた
……それだけのことを彼女はこの城下で行ってきたから……
共にいたはずの男はいつの間にか姿を消していた。
いや、逃げている途中で男の悲鳴が聞こえた気がしたけれどもそれでも女は1人で逃げ続けていただけ
「わ、わたしはわるくないわ……っ」
立って逃げようとしても気づけば足には力が入らず、ただ少しずつ近づいてくるその足音を耳にし続けなければならない状態に彼女はどんどん自分が何を言ってるのかもわからないほどに混乱を起こしつつあった
「ねぇ、わたしがもってるもの全部あげるからぁっだから見逃してよぉ……っ」
女の声は路地裏にただ響くだけ……
それでも、その足音は止まらない。
そして……
『後ろの正面、だぁれ?』
どこか幼さの残るその声は、壁しかないはずの場所から聞こえてきて
彼女は大きく目を見開いた。
黒い黒い人影が、黒い縄を路地裏に張り巡らせて、その縄の一端は気づけば彼女の首に巻きつき……
それが、彼女が見た最後の景色だった……
「あーあ、もう鬼ごっこも終わりかぁ……次は、何して遊ぼうかな?」
追いかけっこにこおり鬼、いろ鬼にかくれんぼ。
その子はまだ遊びたりない。
それらを物言わぬものにしてもまだ……
そろそろブラック期間終わるよー




