第36話:ひっそり起こる騒動と
――最近、城下の方が騒がしいらしい、と言っていたのはメイドの1人だったか、騎士の誰かだったか……
その時は誰も気にしてはいなかった。そう、誰も……
だが、それが発見された時、無関心ではすまなくなっていた……
「え、あの爺さんどもの下僕?」
「えっと……少し違います。神官の耳という名称持ちですね」
アインさんが言うには――ボクからすれば爺さんどもの下僕の――神官の耳という人達は大半が元々孤児で、噂とかの情報を神官に伝えるのがお仕事らしい。
まぁ、たまに個人と契約してる人はそれ以上のこともしてるらしいけどね
とにかく、昨日その神官の耳って呼ばれてる人の1人が物言わぬ姿で発見されたらしい
とは言え、その人は別に死んでたわけじゃないみたいだけど
「ただ、その被害にあった神官の耳は少しいい噂を聞かない者でしたから……」
ただなんとなく。
アインさんがなんとなしに言ったその言葉にボクの内心はなぜかギクリと反応していた。
……なんでだろ?
そんな話をしてから数日、城下は変わらず騒がしかった。
ただ、やっぱり襲われたりしてる人はよくない噂を持つ人ばかりらしい
「物騒な世の中だよねぇ深咲」
「んー……そうだね」
そういえばと思いだしたこともある
城下が騒がしくなった頃からボクの中にあったあの気持ち悪さがなくなっていたことを
そして、被害にあった人達にある種の共通点があることも……
「瑠衣、犯人探しとかしちゃダメだよ。危ないから」
「わかってるよーそもそも城下ってあんまり行けないし」
「あれ、そういえば瑠衣って城下行ったことあるんだっけ?」
瑠衣はあのおじいさん達のせいで行ったことないよーとあっけらかんと言った
そもそも城下を通ったのもあの教会本国に行ったときくらいだったらしい……
でもあの爺どもももういないんだから瑠衣達も自由行動できそうな気がするけど
そのうちアインさんにでも聞いてみようかなと思ったボクは特に何かをすることもなくその日は過ぎていった。
***
ぽたりぽたりと嫌な音が耳につく……
暗がりの中、指先から滴り落ちるは何かの体液
目の前には人だったはずのもの
――あぁ……気持ち悪い……
ゆらりと揺れる身体にぼんやりと歪む視界……
薄く濁った意識の中でボクはまた何かを忘れた気がした
***
「……そう、以前よりは落ち着いているのね?……えぇ、決して悟られないように……」
「ソウディル、勇者の様子はどうだい?」
「淀みは落ち着いたと思ったのですけどね……やはり一度燻ぶるとダメみたいですわ」
「ううむ、どうせなら俺で発散してくれたらいいのにな!」
「旦那様、今は宵なのでお静かに」
「あ、はいごめんなさい」
城下から離れた魔王のお城で城下の様子を知るのが2人。
その会話はまるで全てを把握しているようで……
一応被害者は生きてます。
むしろ流血はないです。
でもしゃべれない状態。
あ、体液って書いたけどせいぜい唾液程度ですよ?




