第33話:帰り着いたその日。
追い込まれた人が何もしてないなんてない気がするお話。
――宿場町からは余裕を持って出発して。
馬車は一定の速度で確実にお城へと向かっていて……その半ばを過ぎた頃からボクはなんとなく嫌な感じのような、気持ち悪いような……そんな感じのなんとも言えない感覚が少しずつ出てきてるような気がしてきていた……
……ていうかこれは乗り物酔いとかそういう感じではない……気がする……
「深咲どうしたの?」
「なんかもやもやして気持ち悪い……」
「えっ、大丈夫!?」
大丈夫だけど大丈夫じゃない。
ホントそんな感じがずっと留まってるみたいで……なんなんだろ?
そんなことを考えながらも馬車は順調に進んでお城もようやく見えてきた。
……まぁ、なんの変りないもお城だけど。
お城に到着して、出迎えたのはタスクさん含む騎士達で、その様子に嫌な感じはないみたいだから多分大丈夫だろうけど。
「王子、ご無事でなによりです」
「変わりは……いや、それを聞くのは野暮だったな」
「はい、教会本国よりの伝達により神官達の捕縛は完了済みです」
「そうか。……王や神官長も無事か?」
「はい。彼らが直接行動を起こす前に捕縛できたことにより異常もみられておりません」
「……ごくろうさま」
騎士の人とキラキラ王子との会話を横で聞いてたけど……王様とかアインさんが無事みたいでよかった
にしても……あの老害達がまったく何もしなかったっていうのはなんか違和感があるんだよなぁ……
――このとき、その当てにならない勘をタスクさんに伝えて城中を調べなおしてたらまた展開があったのかな……なんて、後悔にも似た感情を持つことになることをボクはまだ知らなかった……――
「ミサキ様、お疲れ様です」
「あ、カオンさん」
うん、カオンさんからも嫌な感じはしないから大丈夫そうかな……
正直ホントに何事もないとは思えないけどさ
あ、でもよくみたらカオンさんの手首には出発前にあげたあのミサンガがまだついてたからとりあえずはセーフだと思うことにした。
だって洗脳とかかけられてたらこれがついたままとは思えないし。
ボクがつけた目印もそのままだし。
なによりも嫌な感じがしないっていうことでカオンさんはなにもされてないという確信だけ持てたのはよかったことでいいかな。
そのあとボクはアインさんに会いに行き、教会本国での話をしたり、その間お城であったことを聞いたりしてある意味では充実させていた。
……そういえば聞くの忘れてたけど……どうしてアインさんとツヴァイさんって同じシアだったんだろ?
そのことが少しだけ気になったけどどうしても気になるわけじゃなかったから聞きに戻るなんてことはしなかった。
だいたいのやることも終わったボクは久しぶりに割り当てられていた部屋に戻り、さすがに移動もろもろで疲れたのか、ボクはあっさりと眠りに落ちた
――そして、とても嫌な夢をみた……両親が死を見つけてしまったあの日の夢を……
まぁ、人に何かする余裕はなかったけど実は勇者に割り当てた部屋には何かしてたんだよってことです。
22話でちょろっと出てきた“黒い淀み”が次からどろりと出てくる……はず!
黒い淀みってようにはトラウマとか怒りとかそういうもののことなのです。




