第29話:教会本国にきたわけで
――ガタゴトと馬車に揺られて数時間?そろそろ車窓から見える景色に飽きてきた頃よくやくその車窓に変化が見えたわけだけど……
「ねぇ、キラキラ王子、あれが教会の本部?」
ボクがそう指差した先には、白くて大きくてとがった屋根の建物が一際目立ってそびえたっていた。
キラキラ王子はそれを見てひとつ頷き
「はい、そうですよ。今見えているのは本部の壱館と呼ばれている建物ですね」
「ん?本部の建物って何個もあるの?」
「えぇ、いちばん中央に零館と呼ばれる建物が一堂あり、その周囲に六館から八館までがあり、そのさらに外周に壱館から五館まである形になっています」
ん?つまり五角形になる形で五堂教会があって、その内側に三堂教会があり、そして多分一番の重要なとこなんだろうという想像が付く零館が一番の中央にあるってことなのかな……
それからよくよく話を聞けば、ボク達が向かっているのはひとまず弐館を通り、六館を抜け、最終的には零館で話し合いをする予定になってるらしい。
にしてもやっぱりややこしい気がする……
ちなみに、一応キラキラ王子がいるからそこまで簡略化できてるだけで、普通は壱館から順番に全部回らなきゃいけないらしい。最終的にはやっぱり零館みたいだけど
「そういえばキラキラ王子、アインさんの言ってた……なんだっけ、ミウフォンってどこで買えるの?」
「ミウフォンですか?それでしたら各所にある屋台ですね」
「各所?」
キラキラ王子が言うには、まず外周の教会の入り口前に小さい市場があって
それから各教会内にもいくつか売店的なのがあるらしい。
売ってるのはミウフォンを代表に記念グッズに軽食とかだとか……え、観光地なの?
そんな風に話をしてるうちに馬車は弐館の前に到着をした。
馬車の外では、騎士の人と多分教会の人がなんか話してたけど……何を話してるのかはさすがに聞こえないのか……
多分2,3回くらい言葉を交わした後、扉の前の床が下り坂になるようにさがっていって……
「トンネル……?」
ボクは思わずそう呟いたのだって一応理由はある。
馬車が坂を下っていくほどその景色は薄暗くなってくけどさ、横にある壁にはろうそくとは違う感じのあかりがあって、まさに穴で……
それをトンネルと言わなかったら何をトンネルっていうのさ
まぁ、視覚的変化がなくなったわけだけど。
それもほんの数分のことで、トンネルを抜けた先にはまた建物があった。
「あれが六館ですよ」
キラキラ王子が指差したのは内側に並ぶもののうちの一番近くて手前にある建物だった。
そして馬車はここで降りるらしい。
なんでもこの先は馬車とかの乗り物が禁止になってるんだとか
「キラキラ王子も歩かなきゃいけないんだね」
「えぇ、零館では対等であることが基本ですから」
そんな会話をしながら六館の中に足を進めたけど……思ってたよりもミウフォンのお店が近かった。
漂ってくる優しい甘さの香りに思わず惹かれてその香りの元を見てみれば
六館だからなのか、人はそこまで多い訳じゃないけど……
ていうかなんか見たことある人がいる気がするけど気のせいだな……
騎士の人がミウフォンを買ってきてくれるって言ったからとりあえず全色頼んでみたら二度見された……いいじゃん、食べてみたいんだから
まぁ、瑠衣が頼んだらあっさりというか買いに行ってた
ボクのはついでに買ってくれるらしい。戻ったら王様に告げ口してやる……
騎士の人が買ってきてくれたミウフォンはホントにそれぞれ単色で一口サイズの正方形をしていた。
白色はミルクっていうのは憶えてるけど……他は赤にピンクに緑、あと黒と黄色にオレンジ色と茶色に……青!?
「青!?」
「何味なんだろ?それにしてもカラフルだね!」
「うん……」
よくよく考えたら緑と黒も味が想像できないけど……とりあえず緑から食べてみたら外側はさくさくで中の方はもちもちしてた。
そして緑はメロン味だった……え、ちょっと意外だったんだけど……
「あ、これおいしい」
「深咲、このピンクの桃味だったよ!」
とりあえずボク達はミウフォンを食べながら六館を抜け、零館の前に到着したけど……
見上げた零館は今まで通ってきた弐館や六館となんか空気が違う気がした。
拒絶の空気じゃないし、神聖な空気ともちょっと違うけど……なんだろ?例えて言うなら離れて住んでた実家に久しぶりに帰ってきてほっとするような感じ?
「ていうか教会なのに神聖感がないのはなんでだろ?」
「どうかしましたか?勇者様」
「んー?いや、なんでもない」
キラキラ王子に聞いても仕方ないことだしなぁ……
そんなことを思いながらゆっくりと開く扉を見てればその隙間に見えてきたのは……人?
青は何味にしよ・・・・




