第28話:宿場町の夜、教会本国への道
――温泉に入って、ご飯をいっぱい食べて……眠りはじめた時は瑠衣と2人だったのに暑さで目を覚ませばいつの間にか白夜がいて……
ていうか、ある意味ボクにはテンプレだけど……いつの間に来たんだろ……
まだ時間的に深夜帯だろうけど、ちょっと喉も乾いたボクはリビングみたいなとこで水でも貰おうかと思い、部屋を出た訳だけど……
「勇者様、起きたのですか?まだ起きるには早いようですが……」
「……キラキラ王子まだ起きてたの?それとももう起きたの?……まぁ、どっちでもいいけどお水飲みたくて」
「あぁ、水ですか。」
キラキラ王子が騎士の方をチラリと見れば騎士は近くにあった水差しと銀のコップをくれた。
よく見たらキラキラ王子の手元にはお酒ぽいのと氷があるから……水割りでもしてたのかな……
そんなことを思いながらコップに水を入れ、一口二口飲んで
改めて王子の方を見れば、また書類を見てた。
「キラキラ王子も寝ないと明日も大変じゃないの?」
「わかってますよ。この資料だけは確認しなければならなかったのでね。」
ほんの少しの好奇心からどんな資料なのかと聞いてみれば、なんでもアインさんが纏めたあの老害達の行ったこと一覧らしい。
……ていうか、あの老害達はどんだけやらかしてるの……ボクの方から見てもだいぶ細かい字で5,6枚は超えてそうなくらいの枚数を持ってるように見えるんだけど……
とりあえず、その辺のむずかしいことはボクにはよくわからないからキラキラ王子に任せるけど……
寝不足だとしてもそのキラキラは陰らないってどのくらいキラキラなんだこの人は……
とりあえず飲み終わったコップを片づけようとしたら水をくれた騎士がいつの間にか片づけてて
まだ起きるのに早いっていうなら2度寝するしかないよね
「寝不足で馬車酔いしたらやだからボク2度寝するけど……キラキラ王子も早く寝るんだよ?」
「えぇ、ご心配ありがとうございます。勇者様」
ホント、このキラキラ王子って憎めないよなぁ……
召喚されたときはあれだったけど。
まぁ、よくよく考えたら書類のチェックを馬車の中でやったら確実に酔いそうか。
ボクはそう自己完結してさっさとお部屋に戻った。
その後、リビングみたいなとこの明かりは朝まで消えることはなかった……らしい
「……徹夜したの?キラキラ王子……」
「いえ、その……寝ました……よ?」
朝食を食べて、すぐに馬車に乗って揺られて……
ボクはぼんやりとキラキラ王子が少し眠そうにしてることに気付いてちゃんと寝たのか聞いてみたら無言が返ってきたからのあの言葉だったけど……
ていうか目線逸らしてる時点で寝たっていっても絶対分単位な気がする……
一応キラキラ王子が一番の交渉役のはずなんだけどなぁ……
こんな感じでホントに大丈夫なのかな……
ボクが心配することはそんなに多くない。
ひとつは教会の本国でちゃんと交渉という名の老害達の断罪ができるかどうか
ひとつは瑠衣をちゃんと守れるか
ひとつは王様とかアインさんとかが大丈夫かどうか
ひとつはタスクさん達が無事かどうか
ボクにとって、それが心配であり気になることだった。
ていうかそのどれもがアウトだった時点であの老害達の天下とも言えるからなぁ……
――そう考えながらもボクの内にはじわじわと嫌な予感が滲みでてきてる気がしていた……――




