第22話:お城に帰る勇者と魔王夫婦の語らい~ただし愛は語らない~
途中で第3者視点になります。
「と、いう感じだな。」
魔王の初代語りはホントに長かった。
そして濃かった……
「なんていうか、ゲスだったんだね。初代の守護者って」
「みたいだな。当代の守護者ってどうなんだ?」
当代の守護者……ってつまり白夜のことだよな……
なんだろ……あいつはゲスではないけど……
「……あいつは過保護だと思う……」
「過保護?」
「うん、瑠衣もそうだけど。」
「その子が当代の神子なのかい?」
「そうだよ。ボクの幼馴染。」
瑠衣と白夜の話をすればソウディルさんと魔王はどこか和むように目を細めていた。
……なんでだ。
「しかし、ライバル関係の神子と守護者って初めてじゃないか?ソウディル」
「そうね、私も初めて聞いたわ。ミサキ様はそのお二方にとって大切な存在なんですね。」
「2人が心配症なだけだと思うけど……」
そしてボクはそう言って思い出した。
ボクがお城を出てかなりの時間が経過してることに。
「あ、そろそろ帰らなきゃ……」
「もう帰ってしまうのか……ならばもう一度俺を縛ってくれ!」
「旦那様、はしたないですよ?ミサキ様、またいらしてくださいね」
「うん。」
建物から出るといつの間にか目の前には夜走馬がいて、早く乗れって言ってるようにも見えた。
だからボクは素直に夜走馬に跨り走り出した。
さて、どのくらいで向こうのお城につけるかな……
ちなみに、魔王は縛ってない。
***
深咲が去った魔王の城
そこの中庭変わらず椅子に座って茶を飲むソウディルと空気椅子を続けている魔王がいた。
「……あなた、ミサキ様のことどう感じました?」
「そうだなぁ……もっと俺を痛めつけてくれると思ってたのに。」
「ミサキ様はあなたの特質を認識してますよ。あの方がたよりも」
ソウディルがそう言うと魔王は僅かに目を見開いた。
「ダメージが回復だと言う認識以上のか」
「えぇ、あの子はとても敏いようですわ。だからあなたに傷を与える方法も理解したようですけど……」
――あの子は、今のままではそれさえ行わないみたいよ――
なんでもないようにソウディルはまた茶を口に含んでいたが、魔王はその言葉の意味を理解して見開いていた目を一度閉じ、眉を顰めていた。
「初代の勇者殿もかなり変わり者だったと知っているが……今代の勇者もとはなぁ……異世界の者とはそういう気質があるのだろうか……」
「私には判りかねますけど……ミサキ様はおそらく……」
魔王は知らない。
当代の勇者の内心にある“黒い淀み”の存在とその意味を。
――彼がそれを理解した時、彼女の存在意義が変わるということさえ誰もまだ気付かずにいた……――




