第21話:閑話でもいい気がする初代らへんのお話。
※約1名ゲスいです。(オブラートに包んだ結果)
――世界が生まれて幾年、何もなかった場所には家が建ち、生命が育まれていた。
そして、世界にはいくつもの種族がそれぞれ住処を持ち互いに干渉することもなく……
その時までは……――
魔族と呼ばれるようになった種族の中にとても強い魔王と呼ばれる存在が現れたことにより、人種族と呼ばれるようになる種族達が妙な危機感を持つことになり
そして、人種族はとある現在はもう存在しない種族によりいくつかの禁呪魔法を教わったためにそれは行われた。
そう、それが最初の異世界召喚であり、勇者の誕生であった……
世界に初めて召喚された勇者は黒髪で、中肉中背のごく普通の青年だった。
それから、勇者と共に召喚された神子は背中まで伸びた黒髪にすらりとした美少女とも言える女性だった。
そして、同じく召喚された守護者は勇者達と同じような黒髪で、ひょろりとした青年だった。
そんな彼らも最初は戸惑いを隠せずにいたが、徐々に召喚された意味を知っていき、役割を理解していった。
そんな中でひとつだけ予想外だったことがあるとすれば、勇者の青年と神子の少女は召喚以前から交際していた、ということだろう……
――その2人の関係が“とある人物”の精神を狂気へと変えていくことになるとは誰が想像したか……――
彼らが召喚されて幾月が経ち、勇者は初代魔王と出会った。
ただ、その魔王ははっきり言えば彼らが思っていたような魔王とは違っていた。
彼の魔王は言うならば弱きを慈しむ良き王で、何より他者との会話が好きな人物であった。
もっとも、彼が持つ力は雑兵が何十何百と束になって挑んだとしても敵うことのないほどあるが
それゆえに彼は魔王として魔族を総べていた。
勇者と魔王は話を交わすたびに親しくなり、いつしか勇者は討伐の意味を失くしていた。
――そして、守護者の彼がその対話の影で動き出す……“彼女”自身と、彼の“地位”の全てを自分の物にするために……――
守護者が事を起こしたのは勇者が城下に遊びに行ったある日のことだった。
その日、神子は1人城の書庫に籠り調べ物をしていてあの男にとっては都合のいい状況になっていた……
そして、彼女は突然襲ってきた守護者に抵抗虚しくその場で汚されてしまった……
その場から動けず、身を丸めるように啜り泣く神子に守護者は脅し言葉を吐き出す。
言葉は単純
〔このことをばらされたくなければ勇者と別れ、自分と付き合え〕と
彼女はその言葉の通り勇者と離れることを約束した
だが、守護者と一緒になることは拒否をした。
一見はそれで納得したかのように見えた守護者
しかし彼はそれで満足するはずがなかった……
次に彼は魔王と対話をする為にでかける勇者について行き、勇者を暗殺しようと企み
そして、それは実行された……が、それが成功することはなかった。
勇者は殺されそうになった瞬間、たまたま近くにいた魔族の少女が魔力を使ってその凶刃を砕き
そのまま彼を連れて逃げ去ったから
そのことに守護者は苦々しく思いながらも王らには自分の都合のいいように報告をした。
曰く〔勇者は魔王を恐れ逃げ出した〕と
その違和感に気付いたのは神子だけ……
それから間もなくのこと
守護者と神子は魔王の元を訪れることになった。
神子の主張によって……
もっとも、彼女は実際に魔王の元へ行くつもりはなかったが。
魔族の領域の方面とは違う場所、人気がない場所へと神子は守護者を誘い、そして
彼女は、自身を抱こうとした守護者の男を神の力によって封じた。
彼に、魔王という名目を与えて。
魔王がそのことを知ったのは偶然だった。
人種族の領域にある未開なる位置にて神聖なる力の意識が突然現れたと伝える存在がいたからこそ知ることになったのだったが、それが神子によるものだと気づいたのは他ならぬ守護者に殺されかけた勇者だった。
――魔王として封じられたその守護者の顔は、とてもまっとうな人間がするような表情ではなかった……――
魔王は勇者に問いかけた。
〔神子ともう一度会う勇気はあるか?〕と
そう問いかけたことには理由があった
守護者に殺されかけ、魔族の少女に助けられた勇者は俗に言う一夜の関係というものを持ってしまったから
だからこそのあの問いかけだった。
勇者は、魔王の言葉に躊躇いもなく一度頷いた。
それだけ彼は彼女を愛していたから
そのことで見限られたとしても彼はそれを間違いなく受け入れることは確かだった。
後日、魔王によって彼の城に招かれた神子は1人でその城へと来た。
それは以前から勇者に魔王のことを聞いていたから
ただ広い部屋の中には魔王と神子の2人きり。
2人の目の前にあるお茶からはゆったりと白いゆげが昇る。
魔王は一度お茶に口をつけてからゆっくりと話しだす。
勇者にまつわること、彼の知る全てを。
魔王の口から全て語り終えたのは日が傾きはじめる頃だった。
神子は一度目を伏せ、そして、意を決したように顔をあげ、こう言った。
〔私はあの人を責めることなどできません。私はあの男によって汚れてしまったから……それでも、あの人が私でいいと言うのなら私は全てを受け入れます。〕
そう言いあげた彼女の目には一点の曇りもなくただただまっすぐだった。
魔王は彼女の言葉に頷き、すぐに勇者を呼び、そして魔王は提案した。
曰く〔守護者を魔王として殺し、勇者を守護者として連れて帰れ〕と。
その時、魔王は今自身のいる座を辞することをすでに内心で決めていたということはまだ誰も知らなかった。
魔王の提案に勇者と神子は受け入れ、彼に礼を言うと城を後にした。
小さくなっていく2人の背中を見送った魔王はその足で封じられている本来の守護者の元へ赴き
そして、音もなく彼を葬り去った。
その後、神子と守護者を称するようになった勇者は王の前で魔王を封じた旨を告げ
望みを求められた時、2人はそこではない場所で共にあることを躊躇うことなく求めた。
王はその望みを叶える為に人種族の領域の片隅に2人だけの場所を与えた。
魔族の領域にとても近いその場所は、決して誰も近づかない。
王らが2人と再び見えることはなかったという……
――ただ、人種族の者らは知らない。
魔王はその後も現れていたことを、そしてその魔王達はことごとく側近らに裏切られて殺され、1人1人が長続きしていないということを。
死なずに魔王の座を辞した者は片手で足りる程度だけだった、ということを……――
やっぱりどうしてもだったとかが増えちゃうなぁ・・・・
とりあえず某ゲス者さんのあれは若干の胸くそかなーと思いつつ大丈夫かな。
次回は普通に戻るよ!安心!




