第20話:本題の前に。
「さぁ、話をしようか勇者!!」
「……あ、うん」
外から戻ってきた魔王はソウディルさんの横に座ったけど……
すわ……
「その前にさ……なんで魔王空気椅子なの…?」
「なんとなくだ!で、勇者は何を聞きたい?」
ボクはなんとなくわかってきた気がした。
魔王にツッコミを入れても意味がないという事実に……
――ともかく、ボクは魔王に一番気になっていたあの事を聞くことにした。
とは言っても1つだけ、とは言われてないけどさ
「昔の勇者の話、って言ったらわかる?」
「ふむ、昔の勇者?」
「えっとね」
ボクはお城の書庫で読んだ消えた勇者の伝説を魔王に話した。
すると魔王はすぐに理解したのか何度も頷いた。
「それなら初代の勇者だな。……話してもいいけどだいぶそっちの話より濃いぞ?」
「濃い……」
それがどういう意味で濃いのか、ボクはまだ聞いてないからわからないけど……
多分、そういう意味で濃いんだろうな……
「うん、聞かせて。ボクは多分知らなきゃいけないことだから」
「わかった。でもその前に……ソウディル、俺にもお茶をくれないだろうか!」
「えぇどうぞ。喉が乾燥して聞き取りにくければミサキ様にも失礼ですものね。」
ソウディルさんはにこやかに新しいお茶をティーポットからカップへと注いでいた。
その間、魔王はボクの方を見てこう言った。
「ところで勇者、おまえは“召喚者”だな?」
「しょうかんしゃ?」
「そうだ。この世界において、勇者という存在には2種類もとい2つのパターンというものがある。ひとつがこの世界で人種族内で最強の者を勇者と称する例。そして……」
「もうひとつが他の世界から召喚した人?」
魔王はその通りというようにひとつ頷いていた。
ていうか勇者ってこの世界産の勇者もいたのか……
そんな話キラキラ王子とかもしなかったんだけどなぁ……
「まぁもっとも、勇者という存在が生まれ、活動した者はほんのわずかだっただがな。で、だ。初代勇者というのもまた召喚者だったんだ。」
「だろうね。……じゃあその召喚者っていうのは初代勇者とボクだけなの?」
「あぁ。俺もよくは知らないが、勇者を召喚するというのはなかなか解決しなければならない問題が多いらしいし。あとは神子と守護者の3人必ず揃ってではないと碌なことにはならないらしいな。」
だからあの水晶玉なのか……
人サイドと魔族サイドの両方から見て、ボクはようやく理解した。
……気がした。
「はい、あなた。今回のお茶は普通のですからね。」
「うむ。いつものソウディルが淹れてくれたお茶も刺激的で好きだが俺も頑張って話をするからな!」
魔王はソウディルさんに淹れてもらったお茶をあぁ、うまい…と、嬉しそうに飲んでるけど……
刺激的なお茶ってどういうことなんだろ……
そうは思ったけど、そこに触れればきっとボクは何かに巻き込まれてしまいそうな気がしたので気にしなかったことにしてまたお茶を一口啜った。
そして、魔王が語り始めた初代勇者達の話。
それは確かにボクが思っていたよりも濃くて、そして……あの、嫌な気持ちを思い出そうになった……
――とりあえず、瑠衣達を連れてこなくてよかった……――
次回はある意味第三者視点になります。(初代語りだからね)




