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第19話:やってきた客は

予告通り魔王視点です。

――せっかく、愛しいソウディルと戯れながら勇者の話を聞くところだったのに。


そんなことを思いながら俺は呼びもしていない客人の元へ出迎えに来た。

そして、門を出てその客人がいて……


「なんだ、またおまえ達か。」


もっと面白い奴らが来たのかと思ったのに。

これなら勇者の方がまだ面白かっただろうな。


「マディス・ムド!今日こそおまえを……っ」

「魔王の座から引き下ろすって?それも聞き飽きたんだけどなぁ……カウェル?」


そう、5人組で俺の元に来た客人……いや、正確には客じゃないけど。

彼らは言うならば俺の元学友で、俺がクラスで目立たない位置にあったとして5人は悪い意味の方でよく目立っていた。


……それがいつの間にか俺の方が目立つ位置にあるということが多分許せないんだろうなぁ……


「まぁなんでもいいや。早く終わらせてくれないか?今客人が来てるんだよ。」

「ずいぶんと珍しいじゃねぇかマディス・ムド。おまえのとこに客が来るなんて」


カウェルという鬼種族の男はどうしようもないくらいの目立ちたがり屋のせいか学生の頃からも上から目線だった。

まぁ、俺が関わりに行くってことはほぼなかったが。

そんなことを思っていた時、ひとつ動く影があった。


「……客……まさか、勇者……?」

「お、おう?ていうかしゃべれたのか……カゲロウは……」

「マディス・ムド、勇者は……今の勇者は“この世界の者か”?」


一瞬、黒ずくめの姿をしたカゲロウのいう意味がよくわからなかったがすぐにわかった。

なんでもカゲロウの先祖は異世界から召喚された初代勇者の子だったらしい。

それでヤツはその初代勇者が生まれた世界に興味をずっと持っていたことは学友達皆知っていた。


「それはわからないよ。これからいろいろ聞いたりするとこだったんだから。ほら、とっととはじめようか。」


挑発にも満たないことをしてみればカウェルがあっさり釣られ

4人もまた慌てたように手に持っていた武器を俺に向けた。

そんな様子に俺は思わず口元に笑みを浮かべてしまう……



――さて、こいつらはどれくらい俺を傷つけてくれるだろうか?――



時間にすればきっとそれほどソウディルと勇者を待たせることもなかったと思えるくらい。

俺の目の前には5人が息も絶え絶えに地に伏していた。


「なんだ、こんなものか?」


俺は1歩もこの場から動いてないのに。

そう言えばカウェルは悔しそうに呼吸も荒いまま俺を下から睨んでいた。


うむ……やっぱりこの視線も物足りないな……


「気がすんだならとっとと帰ってくれないか?俺はこれから勇者と話をするんだからな。」



さてさて、勇者はどんな風に俺で遊んでくれるだろうか。

あの縛りは見事だったが。


……あぁ、楽しみだ……


そんなことを思いながら俺は城に戻った……が、俺は知らなかった。

勇者に戦う意志がないことを、そして、彼女の中に“ソレ”が欠落していたなんて……

カゲロウ氏はのちのち再登場すると思われます。

なお、一緒にいた犬とか鳥の名前は考えてはないです。

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