第17話:唐突にはじまったのは魔王の嫁とのお茶会。そして
――ボクは何故か魔王のお城の中庭でお姉さんが淹れてくれた紅茶を飲みながらそのなんとも言えない光景をなんとも言えない気持ちで眺めていた。
すべては、ほんの数分前
ボクがあのドM魔王と対面した直後に遡る……
***
逆さ吊りだった魔王が突然自身を縛っていた縄を引きちぎって飛び降りてきて
まっすぐボクに向かってきていたから思わずいつものとこにいれてたロープを引っ張り出して
思わず縛り直したのはその3分くらい後。
その瞬間、魔王が全力でありがとうございますって叫んでたのは多分空耳だよね……きっとそうだ……
ただ、その魔王が急に動いた余波なのかは知らないけど
魔王が動いた場所の床とかもろもろが焦げたというか削れたというかそんな感じになっていた。
「……旦那様、またですか?」
「あぁ、怒った表情も美しいよソウディル!そしてなかなかいいテクニックを持ってるな!勇者」
とりあえず魔王、テクニックって何……
ボクはただ咄嗟に魔王を後ろ手で固定する形で縛っただけなのに。
「お客様、少々ここの手直しをしなくてはなりませんので中庭でお茶にしませんか?」
「え、あ、はい?」
***
そして今に戻る。
……とりあえず、そろそろツッコンでもいいのかなぁ……
「あの、お姉さん……?」
「あら、ソウディル、とお呼びください?お客様」
「えっとソウディルさん……それ座りにくくないの?あとボクは深咲でいいよ。」
「ウフフ、こうするとこの人も暴走しないんですよ。ミサキ様」
ボクがツッコミたかったこと、それはお姉さんもといソウディルさんが魔王に座ってるってこと。
つまり今、魔王はボクが縛った姿のまま、ほぼ四つん這いでお尻にソウディルさんを座らせている。
そういう癖なのは理解したけど……この僅かに聞こえてくる呼吸音ってなんとかならないのかな……
すっごい荒いのが聞こえてくるんだけど……
「それでミサキ様、お茶の方は口に合いませんか?」
「ううん、お茶美味しいよ。ただ魔王が気になるだけだから」
「そうですか……そういえばミサキ様は勇者なんですね。」
「らしいね。ボクには関係のないことだけど。」
お茶はホントに美味しいんだ。
ただ本気で地べたにいる魔王が気になるだけで……
ていうか、あの感じからしてこの魔王って絶対攻撃力があるタイプの勇者でも倒せない気がするんだよなぁ……
そんなことを思いながらお茶を啜ってると外の方から少しずつ喧しい感じが近づいてくる気がした。
そしてそれに気付いたのはボクだけじゃなくて……
「あら、旦那様。またお客様みたいですわ?」
「そうだね、ソウディル。あまり気が進まないけど君の楽しみを邪魔しそうだからちょっと行ってくるよ。」
「えぇ、あまり門を汚さないでくださいね?」
「わかったよ!」
とりあえずこの魔王夫婦の会話を聞いてて思ったけど
ソウディルさん……全然魔王の心配してないんだなぁ……
――この時、ボクはまだ魔王の力を測りきれていなかった……しょうがないことだったけどさ。




