第16話:辿り着いた例の場所、そして彼が噂のM王さま。
――夜走馬を走らせてから何時間経ったのかはわからないけど地平の向こうからは少しずつ太陽が昇り始めているそんな時間。
ボクの目には目的としていた建物がついに入ってきた……――
「ここが、魔王の棲む……」
目的地には違いないはず、なんだけど……
「なんか、思ってた空気と違う……」
そう言ってしまうボクは絶対に悪くない。
だって、魔王のお城って言ったらこう……頭蓋骨が転がってるとか、黒いとか、そういうのイメージするじゃん。
でも、ボクの目の前にあるお城は……
色とりどりの花が揺れる花壇
赤い色をした門扉
門柱の上にある灰色のガーゴイル
門の外に転がるなんとも言えない物体
「……ねぇ、夜走馬。ホントにここが魔王のお城?」
ボクの問いかけらしさのない問いかけに夜走馬は疑うなんて心外だ、と言いそうな表情をしていた。
「そっか。ここが……」
やっぱり想像してたのと違うけどなんとなくこの子は嘘を言わない気がするし。
にしても、ここまで来たはいいけど
「どうやって入ろうかなぁ」
門扉は閉まってるし、ガーゴイルはこっち見てるし……
どっかにチャイムとかないのかな。
そう思いながら門扉の辺りを夜走馬から降りて見回してた時、その大きな門扉の片隅にある小さな切れ目がゆっくりと内側へと開かれていった。
そして、そこから出てきたのは1人の綺麗な女の人で……
「あら、集団じゃないお客様なんて何年ぶりかしら。」
真黒な髪に真黒なドレスの女の人はボクと夜走馬を見て驚いたような、楽しむようなそんな表情をしていた。
「えっと、あなたは魔王?」
「いいえ、それは私の旦那様のことですわ。」
そう言って笑みを浮かべた女の人……でも、なんとなくこの人は強い。
そうボクには思えた。
だけど、その前に気になるのは彼女の足元にいる小さいゾウみたいな生き物だけど……
なんだろ、このゾウ……なんか見たことある気がする……
そう思ってゾウを見てると女の人は徐にゾウを花壇の方へ連れて行くとゾウは鼻から水を撒きはじめて……
「あ、あれだ!ゾウさんのジョウロだ!!」
「あら、この子を知ってますの?」
「へ?」
思い出せなかったのを思い出せてちょっとテンションがあがっちゃったけどそれもすぐに落ちついて。
彼女がいうにはあの水やりをしているゾウの名前が【ジョウロウ】というらしい。
それよりも……
「ねぇ、魔王に会うことはできる?」
「えぇ、あの人は来るもの拒まずですからどうぞ。」
……来るもの拒まずの魔王……?
そういえば魔王がどんな人なのか教えてもらってなかったけど……
すごい剛腕タイプな魔王なのか、それともすごい魔法を使う魔王なのか
――と、ちょっと楽しみにしていたボクがいた時期もありました……――
「えっと……これが魔王?」
「えぇ、この人が私の旦那様で現魔王ですわ。」
……どうしよ、こういう魔王は想像してなかった……
だって……
「Mな魔王なんて想像できる訳ないじゃないか!!!」
「ただのマゾじゃないわ?生粋のドMですもの。」
そう、ボクの目の前にいる魔王
その人は今現在、逆さ吊りにされながら嬉々としていた。
「ソウディル!鞭を!早く鞭を打って!!」
「旦那様、はしたないわ?お客様の前で」
「え、お客?おぉ!!何年ぶりだろ!!いらっしゃい、勇者!さぁ、俺を痛めつけるんだ!!」
……いろんな意味でボクの方が助けて欲しいデス……
そう思いながらボクは嬉々としながら笑ってる魔王を見上げていた。
言えない、M王さまが書きたくて書きはじめたなんて。




