表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/52

第12話:眠る勇者とやってきた予備軍達。

このお話はカオン視点になります。

薄明かりだけが灯る部屋の中

その中でゆったりとした寝息が小さく聞こえてくる。


この城の中で数少ない“何もない場所”にただ設置されただけのテーブルとベッド

それから必要最低限でしかないシャワーと洗面台に同じように急ごしらえで設置された浴槽。

そう、それだけ。

それだけが勇者様に与えられた設備だった。


そんな扱いを受けているのにこの勇者様……いえ、ミサキ様は気にした様子さえありませんでした。


神子様と守護者様には上等な部屋を用意させたというのに……


この国……この世界は、勇者という存在を信じていなかった。

幾多の謎が残っている初めての勇者召喚によって起こった人々の消失事件。

そして魔王討伐目前で勇者自身も消えた……

と、いうふうに私達には伝えられてきていた。


――正確なことは、誰も知らないのに……――


そんなことを考えながら眠るミサキ様の姿を見つめていた時

廊下の方から誰かの足音が聞こえてきた。



……ここを訪ねてくる人物なんて、いるはずがないのに……?



ほんの少しの警戒をしながら、その足音を聞いていると

それは確実に近づいていていて、そして、この部屋の前で止まった。

それから間もなく申し訳程度の音量で閉ざしていた扉の向こうからノックの音が私の耳にも届いた。


「ふふふ、私の深咲アンテナは今日も絶好調のようねっ」


私が開ける前に開かれた扉。

そこから顔を出したのは、神子様でした。


「神子様……?どうしてこちらへ……」

「深咲を1人にするわけ、ないじゃない。“私達”が。」

「達……?」


神子様のいう“私達”という言葉に疑問を浮かべているうちにまた別の足音が聞こえてきました。

神子様はその足音が誰のものかわかっているようです


「ッチ……瑠衣のが先かよ……」

「あたりまえじゃない。それにしても、この城の人達ってえこ贔屓よね。」

「そうだな。あーと、メイドさん?俺達が深咲についてるから帰っていいよ」

「そういう訳には……」


なんと、守護者様までも現れて。

少し、私は戸惑ってしまいました。

……神子様付きのメイドと、守護者様付きのメイドはどうしたのだろうか……


「バカねぇ、白夜は。このメイドさんはそういうお仕事なのよ。」

「バカって言うなよバカって。」

「メイドさん、私達についてた人達に伝言して貰えますか?深咲のとこにいるって」

「わかり、ました……」


私が頷けば神子様は満足そうに笑みを浮かべ。

いそいそとミサキ様の眠るベッドへと潜り込んでいました。

それをみた守護者様も負けじと同じようにベッドへ潜り込んでいましたけど……


そして、お二方はあっという間に眠りに落ちたようでしたが

ミサキ様の寝息もまた、先ほどよりも落ちついたものになったような気がします。


……ミサキ様とこのお二方……

一体どういう関係にあるのか少し気になりましたが

神子様に頼まれたことはとりあえず行っていた方がいいでしょう。


「おやすみなさいませ……」


そういえば……神子様も守護者様も

どうしてミサキ様がいる部屋がわかったのでしょう……?

ミサキ様に与えられた部屋を知っていたのは私とあのタスクさんと王家の方々だけのはずでしたのに


そう、疑問に思いつつも私はそれを気にしないようにして本来のお二方に割り当てられた部屋の方へと進んだのでした。


……その、私のちょっとした疑問が解決された日はほんの少しだけ先のことでした……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ