プロローグ:始まる前のこと。
ボクの全ての始まりはきっと、あの日から……
全てを失い、ほんのひと時を復讐に身を染めてたあの瞬間……
――ぽたりぽたり、と伝い落ちる雫
――じわりじわり、と広がるその水溜り
――ぐったりと横たわるカラダとぶら下がるカラダ
――もう、会えない。もう、話せない。消えたモノ
それが、ボクの両親のなれの果てだと気づきたくもなかった……
「お、とうさ……お、かあさ……」
おかあさんだったモノから落ちてく赤とシロが何なのかボクはシリタクナイ。
おとうさんだったモノから広がるアカが何なのかボクはキヅキタクナイ。
それでもそれは、ボクの前で嗅覚を刺激して存在を主張する。
“もう、ボクを無条件で守ってくれる存在はこの世にはいないんだと……”
両親のお葬式が終わった後、ボクはお父さんの方の爺ちゃんと婆ちゃんに引き取られることになった。
元々お父さんの方の爺ちゃん達の家はボクの家から近いとこにあったから。
わざわざ遠くの学校に転校しなくてもいいように、と
爺ちゃんの家の近くには顔見知りが多いから寂しくないようにと。
その小さな優しさがあったことを当時のボクは知らない。
そして、ボクのいつもが安定した頃にその人は捕まった。
その人……ボクのお父さんとお母さんを壊したのは、お母さんの兄という関係の人だった……




