ケーキ問答
「ふ〜ん♪ふふふ〜ん♪ふふふ〜ん♪」
「ベネリはご機嫌だねー、一体なにしてるの?」
「出来ました!」
「うみゅ⁉︎」
あーあー、魔王がメイドさんに近付いたはいいけど、急に動かれたから鼻打ってるよ。
まぁ、あれは後ろから近付いた魔王が悪いな。
「うん!渾身の出来ですっ!」
そしてメイドさんは魔王に気付いてないし。
「ベ、ベネリー、なにやってるのー」
「あ、魔王様!今ケーキの飾り付けやってたんです」
「ふーん…どれどれ……」
魔王がケーキの全貌を覗こうとしてるな、俺も気になるし見に行くか
「こ…これは⁉︎」
「なんだ?そんなに凄いのか?……お、おぅ…これはなんとも…」
俺がケーキを覗くととんでもないものが出来上がってた。
ケーキ表面中央には魔王の顔、そして周りをピンクの生クリームでハートマークに囲っている、さらにこれでもかと言うくらいに苺を使用した非常にラブリーなケーキが鎮座していた。
「あのー、ベネリさん?」
「なんですか?魔王様?」
「これは…えっと…」
「ベネリ特性魔王様にメロメロケーキです!」
「あ、うん。聞いた私が間違いだったよ」
今…完全にメイドさんのイメージが…
い、いやいや、自分の主人だから忠義があるだけだよな!そうだよな!
にしても…凄いクオリティだな。そんな時間は無かったはずなんだけど。
「あっ⁉︎」
「どうしたの?」
俺が改めてケーキを見てるとメイドさんが驚いたように声をあげる。
「なにか問題でもあったか?」
「どうやってケーキを食べましょう?」
「あー…」
こんなデカデカと中央に魔王の顔があったら切り分けにくいよなぁ…
「そんなの普通に切ればいいじゃないですか」
…こいつは本当に魔王の執事なんだろうか?
「魔王様のお顔を切るなんて出来ません!」
「私は別に気にしないぞ?」
「魔王様が気にしなくても私は気にします!」
「えっと…なんかすでに包丁をスタンバイしてる人がいるんですが…」
「マウザーさんダメですー!」
「さぁ!バスっといきましょう!」
そんな声と共に執事がケーキのど真ん中に包丁を振り下ろす。
「魔王様ー‼︎」
その結果メイドさんが悲痛な声をあげた。
まるで魔王が死んだみたいな声だった。
「私は生きてるからね、ベネリ」
「でもでも…」
なんか…魔王がメイドさんの頭を撫でてるの見ると違和感しかないな。
そして、そんな問答はどうでもいいみたいな感じで執事はケーキ切り分けてるし。
「さ、切り分けましたよ。お茶の用意も既に出来てます」
「…ここで食べるのか?」
「人が揃ってるのでここでいいでしょう」
なんていうか…乱雑だな。
「よし、机と椅子をだすよー」
「うぅ…ぐすん…ケーキ…たべる」