05
「僕の名前は...西田宗正。君達は?」
人の名前を聞いた後は、
自分達の名前を名乗るのは当然のことだろう。
僕はそう考え、
彼女二人に、
聞いていた。
勿論、僕が一番知りたいのは―
目が綺麗なあの子だ。
(どんだけ下心があるんだ、僕...それにこれじゃあ、ナンパしてた男達と代わらないし)
今気付いたって遅い。
自分の言葉数の少なさに、
苛々する。
「西田宗正、さんですね。私は、斉藤未菜っていいます」
ニッコリと笑い、
僕の質問に答えてくれたのは、
やっぱり気が強い子―
改め斉藤未菜ちゃんで、
後ろの子は、
少し間を置いて、
声を発した。
「私は...小池由利です。あの―有り難うございました」
頭を下げながら丁寧に、
お礼を口にした。
(小池由利、ちゃんか)
彼女の名前を
心の中で何度も、
呪文を唱えるみたいに、
繰り返し呟いた。
「未菜ちゃんと由利ちゃん、ね。宜しく」
僕も笑顔で二人の名前を言い、
顔を見た。
高校生だからか、
顔の感じは幼げで、
だけど二人とも、
強い光を放っていた。
(これから―まだ未来があるってことか...)
僕にない未来が、
彼女達にはある。
「あの、もし良かったら、お礼にお茶でもしたいんですけど、この後空いてますか?」
未菜ちゃんが、
お誘いをしてきた。
お誘いと言っても、
彼女が言った通り、
さっきのお礼だけど。
(これを何もしてない場面で言われたら、逆ナンだよな〜)
僕に限って言えば、
一生されないけどね。
「大丈夫だよ―でも君達こそ、大丈夫?僕は別にお礼なんて―」
当たり前ながら、
学生に
(僕も大学生という、ジャンルの学生なんだけど)
自分より年下の子に、
奢って貰うのも、
お金も足りなくなってしまったらと、
情けない事を
思ってしまう。
「大丈夫ですよ。これでも私達、バイトしてるんで、ね?」
「うん」
未菜ちゃんはウィンクして、
由利ちゃんは元気な返事をして、
恥ずかしそうに、
僕の方を見た。
(か、可愛い...)
不覚にもその可愛さに
ときめいてしまった。
僕は年下の子がタイプだったのか、
とか意味わからないことを思いながら―
「じゃあ、お願いします」
承諾していた。