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04

僕が携帯をしまうと、


八人が一斉に僕の方を見た。


(うわぁ...どうしよ)


顔には出さないが、


僕は相当面喰らっていた。


これはフルボッコされるに違いない。


だけど―


やってしまったものは、


部外者なのに、


余計な事をしてしまった


自分が悪い。


(男だし、女性が居る前で逃げたら、一生の大恥だ)


「て、テメェ!今警察呼んだか!?」


男の一人が、


慌てたように僕に話しかけてきた。


警察呼んだって言ったら、


多分僕は半殺しにされるかもしれない。


「はい、呼びましたよ」


心の叫びとは裏腹に、


もう応えていた。


(半殺し確定...)


泣きたくなる、


とは言っても、


もう大人だし、


感情が欠如し始めた僕に限って言えば、


涙は流せないが。


(だから僕、漫画描けなくなったのかもな)


自分にとって窮地に立たされた、


状況なのに、


頭は全く違うことを


考えていたりする。


「ちっ!女ナンパしようとしただけなのに、捕まってたまるか!」


今度は別の男が、


言った。


「なーんか、やる気なくなっちゃったから、帰るか!見つかる前に」


この台詞を口にしたのは、


明らかにこのグループのリーダー格の男だった。


(え?ボコらないの?)


僕は覚悟していたつもりだ。


恐いけど、


一応。


身構えてはいた。


そのつもりが―


拍子抜けした。


男達は帰っていった。


少女の二人組も、


唖然としたように、


男達の姿を目で追う。


「まぁ、終わりよければ全て良し、と」


僕は独り言を呟く。


その声でハッとしたのか、


気が強い女の子が、


後ろで隠れていた女の子の手を引いて、


歩いてきた。


「あ、あの、有り難うございました!」


威勢良く、


何処までも通る声で、


頭を下げてお礼を言われた。


後ろの子も、


遅れて頭を下げる。


(僕の身が無事で良かった...)


呑気なことを思いながら、


彼女達に返事する。


「いやいや、そこら辺を通りがかっただけだし、それに―」


僕は気が付いたら、


目が綺麗で、


友達の背中に隠れていた少女を見てしまう。


「それはそうと、警察来るんですよね?だったら、ここで待っていた方が良いですかね?」


僕の目線に気付かないのか、


気が強い少女は、


同意を求めるかのように、


僕に聞いてきた。


「...あ、それだったら大丈夫。あれ、嘘電話だから」


そう僕は何処にも電話なんてかけていない。


ましてや、


警察になんか。


あの人達の注意を逸らせれば、


それだけの理由で、


行動した。


だからもしさっきので、


男達がキレていたら、


誰も助けに来なかったから、


僕の命がなかっただろう。


「そうだったんですか!もしあそこで殺られたら、終わりだったじゃないですか」


ハラハラしたという表情を浮かべ、


胸に手を当てて、


安堵の息を漏らした。


(いや、僕は別に大丈夫なんだけど)


君達だってあのままだったら、


ヤバかったと思うよ。


「...未菜ちゃん、名前。助けてもらったんだし」


このままじゃ埒が開かないと思ったのか、


気の強い子の袖を引き、


物静かな女の子が、


初めて口を開いた。


「ああ、そうだったね。すみません、名前教えてもらっても構いませんか?」


名前...。


(名前くらい良いか。減るもんじゃあるまいし)


名乗ろう。


そして僕は、


喋るために、


口を開けた。



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