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02

とある出版社でのこと。


いつまでも続くと思っていた連載が、


急に取り止めになった。


「出だしは良かったのよね―」


僕が今描いている内容は、


何処にでも居るような高校生二年生の主人公、叶。


叶は、


年齢=彼氏居ない歴。


そんな彼女がひょんなことから、


人気アイドルグループ


『spacial』の龍雅と出会い、


付き合い出すといった、


何処にでもあるような少女漫画。


だけど...


「この龍雅は何なの!?叶ってゆう可愛くて、大切な彼女が居るのに!それに叶も叶よ!知ってて傷付いてるのに、何も言わないなんて!」


(編集者さん、また怒ってるな...)


そう、


僕の漫画には欠点がある。


男が不甲斐なく、


女も何のリアクションを起こそうとしないこと。


「すみません...」


頭では分かってる。


これが自分の描きたい内容じゃないってことぐらい。


でも最近、


何にも良い案が出てこないんだ。


悲しいくらいに、


もどかしいくらいに―


「読者のコメントも読ませてもらったけど、この作品に関しては評価が悪いのよね〜」


溜め息混じりな声。


「...........」


僕の作品を担当している編集者さんは、


佐々木紗江さんと言って、


何でもハッキリ答えて、


痛い所を突いてくる人だ。


「だからね...これ私の口から言いづらいんだけど―連載中止になったから」


「...え?」


予想もしなかった言葉。


僕の口をついて出た、


戸惑いの声。


(今までは、内容の文句を言われるだけだったのに―)


遂に来てしまったのか、


こんな日が。


「ごめんなさいね、編集長が決めたことだから」


来るとは思っていたんだ。


ただ僕は知らない振りをして、


内容の文句を言われながら、


漫画を描き続けて、


がむしゃらに、


何が描きたいのかも分からずに。


自分を無理矢理追い詰めて―


そしたらもっと、


自分で何を描きたいのか、


分からなくなってしまった。


結局はそれは、


僕の話は読者のニーズにあった


内容じゃなかったってこと。


「そうですか...今までお世話になりました」


僕は立ち上がり、


平静を装って立ち上がり、


頭を下げた。


(本当は悔しくて、泣きたくてたまらない癖に...)


「でも、また何か良いの思いついたら持ってきて!うちは、何時でも貴方のこと待ってるから」


佐々木さんは最後だからか、


優しく笑いかけてくれた。


―思ってもいない言葉をつけて。


出て行くしかない、


どんなに嫌だと言っても、


決まってしまったことを


僕がとやかく言える立場でもないし。


昔から、


諦めは良い方だったから。


形ばかりの『良い子』。


そんなの自分を慰めてはくれない。


出版社から出た―


真っ直ぐ家に帰るために。

















宗正が出て行った後の出版社―


「昔、少女漫画大賞を受賞した『ムネマサ』君は、一体何処に行っちゃったんでしょうね」


誰にともなく、


佐々木は喋り出す。


「あぁ、まだ彼が高校生だった時ね。あの時は、輝いてたよなぁ」


中年のおじさんらしき人物が、


応える。


「そうですよね...前は良い作品しか描いてなかったのに、最近のは」


佐々木も相槌を打つ。


「きっと心が沈んでる―漫画家で言うスランプってやつだよ、いまの西田君は。だから、待ってやろう。彼の復活を...」


「ですね、編集長!」


彼はこのまま立ち直れないかも、


挫折してしまうかもしれない、


とは思っていたが、


誰も口にしなかった。



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