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僕の悩みを見抜いたような声は、
僕の正面―
丁度大学の門の前。
そこに居たのは、
僕がよく知った男だった。
「よっ!久し振り!」
(.......)
久し振りに外の世界に出て、
一番会いたくない奴だった。
「おい、元気ないなー?どうしたんだよ?」
僕の近くまで軽い足取りで歩いて来ると、
僕の肩に手を置き、
顔を覗いてくる。
「...よ、よう。お前何でこんな所に居るんだよ?」
顔が近いっ!
お願いだから、
離れてくれ!
暑苦しいから!
それに何かと勘違いでもされたりしたら―
僕が心の中で念じていたからか分からないが、
彼は離れると、
僕を見下ろしながら、
応えてくれた。
「光一が、今日は宗正来るって言ってたのに、中々来ないから心配になったんだよ」
両方の綺麗に整った眉を寄せながら、
長身を屈めて、
僕に話しかけてくるこいつは...
一応僕の大学友達の
石川だ。
ある意味有名人で、
大学の皆からは、
『エスパー石川』
と呼ばれている。
何故エスパーなのかと言うと、
こいつ人の心が読める。
本人は認めていないが、
ほんの少し悩んでるだけであっても、
その悩みの理由を当てる。
ドンピシャで。
しかも、
一度も外したことがない。
そのせいか、
皆から気持ち悪がられ、
興味本意でからかわれたりして、
大学にもあまり馴染めているとは言い難い。
(顔は女みたいに綺麗で、モテそうなのにな...)
昔俺も、
こいつに悩んでること
ズバリと当てられたっけ...。
まぁその問題を
今も継続的に僕は、
抱え込んだままだけど。
まだまだ答えは見つからない。
いくら石川に当てられたって、
自分で解決しなきゃな...。
「斉藤のやつが言ったのか...ごめん、心配かけたみたいで」
斉藤とは、
さっき石川が言った
光一という人物だ。
フルネームで『斉藤光一』。
(また余計なことを...)
ただでさえ、
いつもあいつが何かしら仕掛けてくるから、
こっちには安息なんてないのに。
僕が苦手にしている人間を
寄越すなんて。
絶対にわざとだ。